恋ばな

□Please tell me…
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件名《情報屋へ》

名前:匿名希望

依頼内容:『白宮 隴弥』が女らしい。との噂の真相を、明らかな証拠と自白を確かめた上で報告。

期限:1ヶ月

依頼報酬:前払金オンラインマネー1万円+報酬キャッシュ3万円

受け渡し:現金書留。後日詳細。


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件名《Re:情報屋へ》

御意
前払金が届き次第
仕事に入らせていただく

報告はメールで?


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件名《Re:Re:情報屋へ》

添付1件

今使っている
このアドレスに頼む

このアドレスは
今日から1ヶ月たったら変更する

期間が過ぎたら
この依頼は無かったものとしてもらいたい
前払金を返す必要はない


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件名《Re:Re:Re:情報屋へ》

オンラインマネー確認終了
直ちに仕事に移る


御意
期待を裏切らない結果は出すつもりだ

それでは


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カタリ、とキーボードを叩く指が止まった。
机の鍵つきの引き出しを開ければ大量のmicroSDが放り込まれている。すべて同じ見た目の中から迷うことなく二枚を摘まみ上げて二台のパソコンを開いて早速情報屋―八田 秀鴉は仕事にとりかかった。

先ほどのmicroSDは、片方が空、もう片方が十六夜学園高等部二学年の全データベースが入っている。各々をパソコンにセットし3分も経たないうちに目当てのデータを見つけ出した。

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2年B組12番 M
白宮 隴弥(シラミヤ リョウヤ)

学生寮:302号室
保護者:秋本 蜻蛉(アキモト カゲロウ)
血縁者:白宮 遥(シラミヤ ハルカ)妹
誕生日:9月6日
アレルギー:無し
視力:…………

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基本事項をざっと見ても女であると言うことは書いていない。
とはいえ、これは学校のデータを写し取っただけなので、当たり前と言えば当たり前だ。

本番はこの先だった。

更に数台のパソコンを起動させてあらゆるデータバンクにハッキングし、『白宮 隴弥』を探す。
名前だけではなく顔認証などもかけ、保育園、幼稚園、小学校、中学校、全てのデータを洗いざらい調べる。
数時間後には『白宮 隴弥』=『女』であると言うことがはっきりした。
そのデータを空のmicroSDに入れ、ハッキングの形跡を残していないことを確認し、起動させていたパソコンをシャットダウンして一台を残し、脇の大きめな引き出しにしまった。そこにも鍵をかけてようやく一息つく。
パソコン作業用の、目に悪い光線を遮るとか言う伊達眼鏡を外し、目頭を少し強く押さえる。特殊な眼鏡をかけていたって疲れるものは疲れるのだ。

あとは…

『本人の自白』

報酬が良いからやるにはやるが、期限はたった1ヶ月。白宮 遥―委員長の兄ということで面識があるから、全くの他人相手よりやり易いが、それにしても期限が短い。あまり好きではないが、強行手段に出るしかないだろう。
証拠を目の前に突き付け、弱味を握っていることを理解させた状態で問い詰めれば大方うまくいく。
だが、その場合だと『知り合い』だと言うことが逆に障害になる。

…年上ということもあって、周りの同級生に話したら笑われそうなことでも、真面目に聞いて、議論してくれた。あの時間は結構好きだったんだけど…

仕事だから仕方ないか…。

割りきった上で、彼に似つかわしくない長いため息をついた。

やるからには早い方がいいだろう。躊躇ったらきっと、ずるずると延ばして期限内に終わらなくなる。
別に3万円を逃すのは惜しくないが、『情報屋』としての評判は確実に落ちる。
『情報屋』の評判だけならまだ良いが、自分は琥珀がまとめているグループ『AMBER』のNo.2としても有名になっている。No.2がへまをしたとなれば周りに示しがつかない。
よって、失敗は許されない。

明日の夜にでも決行しよう。
乗り気ではないが、仕方ない。
仕事だから。
自分に言い聞かせるようにしながら、部屋の明かりをおとし、眠りについた。
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