「リンドウの花を君に」

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 憤るヒルメスを前に、それでもアイラは気丈に言い募った。彼を止めなければならない。ただただその一心だった。
「貴方は取る道を誤ったのです! 本当にパルスの国と民のことを思うなら、ルシタニアなどに手を貸すべきではありませんでした……どれだけ多くのパルスの民の血が流されたと思うのですか!」
「ならばどうすれば良かったと言うのだ! 簒奪者アンドラゴラスの小倅を八つ裂きにし、パルスの王位を我が手に取り戻すためには止むおえない血だったのだ! 目を覚ませアイラ、ルシタニアの介入によってパルスは生まれ変わるのだ」
 顔を歪めたアイラは自分の目の前にいる銀仮面卿から顔を背けた。
 その腕から逃れるように体をよじる。
「……貴方は、変わってしまわれたのですね……ヒルメス殿下、私は貴方を――」
「黙れ!! お前に何がわかると言うのだ。我が身が味わった屈辱の何が! どんな思いでこれまで生きてきたのかを!」
 ヒルメスの逞しい腕がアイラの体を引き倒す。
 床に背中を強く打ち付けたアイラが痛みに呻くのも素知らぬ顔で、ヒルメスは激昂の感情に任せてその喉元に食らいついた。
 獣が獲物を仕留めるように、白い首筋に歯を立てると、頭上でアイラが小さく悲鳴を上げる。
 その声に自身の高ぶりを感じてヒルメスは柔らかい肢体を思うままに貪り始めた。
「やめて、やめてくださいっ、いや! お願いです、ヒルメス様!!」
 怯えた声と震える体を蹂躙しながら、ヒルメスは自身が満たされていくのを感じた。
 ―――もっと俺の名前を呼べ。俺だけを見ていればいい。
 抵抗する両手を床に散らばる亜麻色の髪の上にまとめて縛り、腰帯を乱暴に解いて服を乱していく。
 まろやかな胸元に顔を埋め、その頂きを口に含むとアイラは悲鳴を上げて体を震わせる。
 やがて隠されていた大腿が顕になると、そのきめ細やかな肌に吸い付き、その感触を味わった。
 両足を肩にかけて、秘められた部分を暴いていった。
 愛撫もそこそこに、乾いた秘部に人差し指を突き入れる。
「いっ、!! いやぁ、やだ……やめて、痛い!」
「――処女か?」
 指をきつく締め付けてくるそこに笑みを浮かべながら問うと、直球な物言いに羞恥を感じたのか、アイラの頬が赤く染まる。
 ふいと顔を背けてぎゅっと目をつむる、その目尻に浮かぶ涙を唇でぬぐいつつ、ヒルメスは中に沈めた指を動かした。
 アイラは下腹部の痛みに息を詰まらせ、唇を噛み締める。縛られた手を握りしめながら、必死に痛みに耐えた。
「深く息をしろ。従わねば苦しむのはお前自身だ」
 そう言いつつ、ヒルメスは容赦なく指を動かし続けた。
 一本、二本と増やしつつ中を広げるようにしながら、体じゅうに口づけを落としていく。
「でき、ない……いや、痛い……ぬいて、やだぁ!!」
 噛み締めた唇が切れて血が流れる。アイラは恐怖に身をすくませた。本当に恐ろしかった。目の前にいる男と、あの優しかったヒルメス殿下が同じ人だと思えない。
 ―――怖い。痛い。助けて……!
「ああ、お前の血は甘美だ。俺を熱く滾らせる」
 舌なめずりしながら、ヒルメスは自身の服をくつろげた。
 アイラの秘部にひたりと自身の滾るものを押し当てる。
「体の力を抜け」
「む、り……や、……お願い、もう……ヒルメスさま、」
「もう? これからだと言うのに。――アイラ、お前は俺のものだ。いい加減聞き分けろ」
「まって、や、ヒルメスさま、―――ひぃっ、っ!!!」
「お前を、誰にも渡してなるものか」
 ヒルメスが狭いそこを犯すその瞬間、アイラは悲鳴すらあげることができず、大きく目を見開いて体を仰け反らせた。
 ぶち、と何かが引き裂かれるような音がして、途轍もないほど激しい痛みが襲って来る。
 苦しいのに息ができない。朦朧とし始めた意識を無理やり持ち上げられるように、頬を叩かれた。
「息をしろ!」
 ヒルメスの指が固く閉じられたアイラの唇をこじ開ける。薄く開いたそれに、ヒルメスは己のそれを重ね合わせた。
 ねっとりと舌を絡め取って耄碌させる。
「いい子だ。お前の中は具合がいい。俺を締め付けてこんなにも離さないぞ」
 無体を敷かれているのに、なぜ触れ合う体はこんなにも熱いのか。混濁する意識の中でアイラはおぼろげに思った。
 ―――痛いのに。怖いのに。苦しいのに。体はこんなにも辛いのに、それでも彼が愛しい。
 何をされても関係ないほど、自分はこの人のことを愛しているのだとアイラは初めて知った。
 涙が、堰を切ったように溢れ出して止まらない。
 頭上で縛られた手がもどかしい。目の前にいるこの人を抱きしめたいのに。抱きしめて、愛していると伝えたい。孤独の中にいるこの方に、もう大丈夫だと、自分がそばにいるからと言ってあげたい。
 強く、激しく体を揺さぶられている。体の奥深くまで、彼に犯されている。
 涙に揺れるヒルメスの顔は、いつの間に仮面を外したのか火傷の痕が晒されていた。
 痛む体を堪えながら、アイラはその傷跡に自身の唇を触れさせた。
 ヒルメスがわずかに身じろぐ。彼が醜いと思うこの傷跡すらもアイラにはただただ愛おしかった。
 声を出そうとして、かすれた音しか出ないことに気づく。伝えたい言葉はいっぱいあるのに、もう、意識を保つことすら難しかった。
「アイラ、アイラ――っ!」
 熱に犯された声で自分の名前を呼ぶヒルメスに胸が締め付けられる。
 体の中を熱いものが満たしていくのを感じながら、アイラの意識は闇へと落ちていった。
 

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