「リンドウの花を君に」IF編

□苦しいほどに愛してる
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《if設定:もしアイラがヒルメスと一緒に行動していたら》
・「愛と狂気の狭間で」と「愛は貴方のそばにある」の続編。順にお読みください。
・最初から最後までがっつりR-18です。閲覧は自己責任。

※本編とは無関係


* * *


 隠しきれない情欲を孕んだ瞳が、獣のように鋭い眼光を走らせている。その眼差しに一度囚われると、体が泡立つように熱くなった。
 汗が滲む首筋も逞しい体も何もかもが、アイラの最奥を疼かせるのだ。
 異性の裸体を直視する恥ずかしさと、体に与えられる甘美な愛撫に耐えかねて目を閉じて顔を背けると、それを咎めるように頬を指先でなぞられて目蓋に口づけを落とされる。
 腰に重く響くその感触にアイラの唇から堪えきれない甘い吐息がこぼれると、ヒルメスは薄く微笑んだ。
「もっと快楽に従順になれ」
 耳元に直接囁かれて、アイラは逃れるように体を捩らせた。
「ん、・・・っ、や・・・!」
 アイラがどんなに逃れようとしても、ヒルメスはその度にまろやかな体を腕に抱き、柳腰を絡め取る。そこに手馴れている様子を見出して、アイラが嫉妬に似た悔しさに眉をひそめれば、愉快だと言わんばかりにヒルメスはまた笑う。
「恥ずかしがることはない。俺の腕の中で乱れるのなら本望だ」
「だって、・・・! やぁ・・・やっぱり、はずか、しいっ」
「早く慣れろ。感じることに怯えるな」
 初めて体を開かれてから今まで一度もしていなかったのだ。慣れろというのは無理な話だ。それに一度目はこんな風ではなかった。ただただ恐ろしくて、痛くて、辛いばかりだったに。
「初めてのときは無理をさせたからな。今宵はたっぷりと味わえ」
 壊すと言ったその口で今度は甘言を吐く。
 ヒルメスの瞳には変わらず情欲の色が浮かんでいるのに、その瞳とは裏腹に甘い言葉を囁いて優しすぎるほど優しく抱きしめるのだ。もう、わけが分からなかった。
 甘やかされて、蕩けさせられて、自分が自分でなくなりそうな予感に確かに残る理性が恐怖を抱かせる。
「ヒルメスさま、や、だ・・・こわ、いっ、なに、何か、」
「大丈夫だ。そのまま、身を任せていればいい」
「やあ、ひる、!」
 ヒルメスの指先が震える大腿を伝って秘部へと触れる。ねっとりとそこをなぞられるといよいよ声を抑えることが出来なくなった。
「ぁ、そこ、やっ!・・・ぅ、ああ、っ」
「可愛いな。もうこんなに濡らしているのか」
「あぁっ!! ・・・ひぁ、あっ」
 卑猥な音を立てるそこからヒルメスの手をどうにか退かそうとアイラは必死に身を捩らせる。ヒルメスはそんな行動もすべて見通して、ぴたりとアイラの動きについて来た。
 音はますます大きくなり、アイラの声にも甘さが増していく。
 そろそろ楽にしてやるか、とヒルメスが秘部を愛撫する手の動きを強めると、激しく首を振ったアイラは刹那息を止めて体を強ばらせた。背筋が弓なりに跳ね上がる。頭が真っ白になって意識を飛ばしそうな高揚を感じて、アイラは涙で頬を濡らした。
「あっ・・・ぁ、ん・・・、・・・っ」
「いい子だ」
 目の前の愛しい女は極めることすら知らない初心である。初めて味わう快楽に怯え、翡翠色の瞳を涙で濡らし、心細げに自分にすがり付いてくる。それを厭う男はいないだろう。まして煽られない男はないだろう。
「ヒルメス、さま・・・」
 普段の凛とした姿からは想像もできないほど舌っ足らずな甘い声に、ヒルメスは目を細めて答える。
 絶頂の余韻に震える体を膝の上に乗せて抱きしめて、安心させるように亜麻色の髪を手櫛で梳きながら、ヒルメスは白い首筋に顔をうずめた。
「アイラよ、怖いか?」
 何も知らない処女だった彼女を、合意も取らずに無理やり犯したのは他ならないヒルメス自身だ。止めてほしいと言われれば、自分の情欲など全て放棄してでも止めるつもりだった。
 愛しい女を腕の中に閉じ込めて滅茶苦茶に壊したいと思う気持ちは確かにあるが、自分がそうする前に、アイラは自分から腕の中に飛び込んできた。
 その気持ちが嬉しくないはずがない。アイラに想われていることを知って、愛しく思わないはずがなかった。
 腕の中の体が身じろぐ。膝に乗せたためにアイラの方が、少しだけ目線が高い。ヒルメスが見上げるように首を上げると、間髪入れずに柔らかな唇が落ちてきた。
 アイラから仕掛けられた、触れるだけの優しい口付けが、この上なく愛らしく思える。酔いしれるように味わって、惜しみながら顔を離せば、アイラは濡れた唇を小さく開いた。
「抱いて、ください・・・ヒルメス様、」
 麻薬のような言葉だとヒルメスは思った。体の芯をひどく高ぶらせる声だ。もう絶対に離せない、離したくないと強く意識させられる。
 ヒルメスは離れていく小さな唇を追いかけてそれを塞ぐと、細い腰と肩を支えたまま追い詰めるように体を前へと傾けた。ぺたりとアイラの背中が白いシーツに沈み込む。少しでも隙間を埋めるようにヒルメス自身もその体に覆いかぶさる。
 白い足を抱えてから、ヒルメスは貪っていた唇を離して唸るように低く囁いた。
「俺を散々煽ったんだ。責任は取ってもらおう」
 ヒルメスの剛直が狭い隘路に差し込まれる。体を反らせて挿入の衝撃に耐えるアイラの悲鳴を己の唇で絡め取りながら、最奥まで一気に身を沈めた。
「ん、・・・っ、―――っ!!!」
 今の衝撃で軽く絶頂を感じたらしく断続的に締め付けながら震えるアイラの中に息が詰まるほどの悦楽を覚えながら、ヒルメスは口づけを解いた。
「ぁ、・・・ひぁ、ん・・・っぁ、」
「お前の中はすごいな」
 過ぎる快感に喉を震わせてぽろぽろと涙を流すアイラが、力の入らない腕を懸命に伸ばしてヒルメスの背中にすがりつく。
 それが合図だったかのように、ヒルメスは中をかき混ぜるように動き始めた。
「ひぁぁあ、ん、ぁ、―っ、ぁ」
 ひっきりなしに声が溢れる。もうどこに触れられても気持ちが良くて、アイラは必死に広い背中にすがり付いた。
 もう自分がどうなっているのかも分からない。けれども目の前の存在がどうしようもないくらいに愛おしいと感じていた。乞うままに、願うままに身を任せることが、間違っていなかったのだと思えた。
「っ、・・・出すぞ」
 散々アイラの中を蹂躙したヒルメスが、奥歯を噛み締めて吐息を零す。熱いもので満たされていく感覚と終わりのない絶頂感に、アイラの意識はゆっくりと深みに落ちていった。

 彼になら壊されてもいいと思った。
 愛しくて、切なくて、彼を見ていると、どうしようもないほど苦しくなる。
 だから彼になら、すべてを捧げてもいいと、そう強く思った。


苦しいほどに愛してる



【あとがき】
 アンケートを設置したら意外にも裏話希望の票を多く頂いたので、思い切って書いてみました。
 書いていてこちらが赤面するほどヒルメス様が素敵すぎてヤバイです。すっごく恥ずかしい。もう無理、って途中で何度も挫折しかけました。
 筆者にはこれが限界でした・・・。暖かい目で見てやってください。
 裏話はそんなに本数書けないと思いますが、楽しんで頂ければ嬉しいです。
 もう一つ、ヒルメスと夢主の子どもの話が読みたいとのご意見も頂きましたので、そちらは目下執筆中でございます。
 名前とか性格とか、IF編に出すなら本編にも同じ設定で登場させたいのでつじつま合わせとか、少々手間取っておりますが近日中に上げたいと思っています。
 と、言いつつそろそろ大学の期末試験の勉強を始めないと行けないのですが・・・。
 現実はシビアです。もっといっぱいお話を書きたいのに!
 まあ試験期間中もぼちぼち書きためるでしょうが・・・。一週間ほど少しだけ遅筆になっても怒らないで頂けると嬉しいです。


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