「リンドウの花を君に」IF編
□この幸せを身に刻む
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《もしもヒルメスが銀仮面卿にならなかったら》
・「人はそれを幸せと呼ぶ」と同設定。時系列的には前話。
・あくまでIF設定の初夜話(R-18注意)なので本編とは無関係
・文字数多め。R-18も濃厚気味
* * *
運命とは不思議なものだ。
身を焼き尽くす炎の中で王家の誇りを失い、生きる意味を失いかけてなお、俺を生かした。
裏切りを憎み、屈辱に耐えかね、一度は死をも覚悟したこの身に救いが訪れるなど思いもしなかったというのに。
それなのに、俺は今もこうして生きている。
それでも、炎とともに全てを失ったと思ったのは大きな誤りだったと、ヒルメスは腕に抱くぬくもりを強く感じながら思った。
弱々しくも確かな存在感を持ってすがり付いてくる細い指先。
首筋に触れた柔らかな唇。
耳朶をくすぐる熱を孕んだ吐息。
寸分の隙間なく抱きしめ合った肌。
それらすべてが体の中の熱を疼かせる。
「ヒル、メス・・・」
愛しい女が己の名を呼ぶ、熱に犯されたその甘い声がこんなにも心を高ぶらせることを、ヒルメスはこの日初めて知った。
誘われるようにほってりと色付いた唇に己のそれを重ねれば、膝の上に抱きあげた状態のアイラは濡れた翡翠の瞳を眩しげに細める。
触れるだけの柔らかな口づけから、次第にとろけるような官能と扇情的な激しさを持って吸い付くと、堪らないとばかりにアイラはきゅっと目を閉じる。
その目尻から溢れた涙すら、愛おしいと思った。
濃厚な余韻が後を引く中で、アイラの頬をヒルメスの指先がまるで愛撫するかのようにするりとなぞる。
「アイラ、お前のすべてを俺にくれるか」
願うように、乞うように、ヒルメスはその言葉を口にする。
今までにないほど高ぶった情欲を身の内で持て余しながらも、ヒルメスは真摯に問うた。
「この先、死が互いを別つまで、俺と共に歩み続ける覚悟はあるか」
アイラは頬に添えられたヒルメスの手に自身の手を重ねる。そしてゆっくりと大きな手を絡め取り、両手で包み込んだ。
祈るように、捧げるように、アイラはその指先に口づける。
「私は貴方にすべてを捧げます。一生をかけて貴方を愛し抜くと誓います。だからどうか、私に貴方を頂けますか」
ただ想い合うだけでは足りない。愛しい人の全てが欲しい。その熱を分け与えてほしい。
いつから自分はこんなにも貪欲になったのだろうか。
きっと口づけの先を求めてしまうくらい、ヒルメスのそばにいることに幸せを感じているからだとアイラは思った。
「俺も誓おう。何が互いを阻もうとも、お前を守り愛し抜くことを・・・・・・だからもう迷うまい。今、お前のすべてを俺に――」
―――捧げろ。
互いを繋ぐその言葉にアイラは心を震わせる。
ようやくひとつになれるのだと思うと、言葉にならない歓喜が胸を締め付け、涙が止めどなく溢れてくる。
「お前は泣いてばかりだな」
「だって、嬉しいの・・・、貴方が、貴方のことが愛しくてたまらない。この想いをどうしていいのか分からなくて」
身を焼くほどの熱が体の奥深くで暴れている。この激情をどうすればいいと言うのか。
アイラは助けを乞い、すがり付くように目の前の逞しい肩に身を寄せる。
「熱を持て余しているなら、俺が教えてやろう。お前のすべてで、俺を感じろ・・・」
さらり、と布が擦れる音がする。
唯一体を包んでいた夜着の裾が腰までたくし上げられると、アイラは息を飲んで体を固くさせた。拒んでいるわけでは決してないが、自分のあまりの無防備さに羞恥心が沸き起こってくる。
何しろ今まで異性の前に裸体を晒すことなどある訳がなかったのだから仕方ない。
小さく震えている白い体を慰めるように、ヒルメスは体を撫でる。その指先が誰も触れたことのない秘部に触れると、アイラははっとして顔を赤らめた。
濡れた音が耳朶をうつ。
何度も何度も指を往復させながら蜜をなじませるようになぞられて、アイラはいたたまれなさに息を乱した。
一方のヒルメスは事も無げに嬉色を露わにする。羞恥に震えるアイラを愛おしく思いながら、着実に自分の理性が削られていくのを自覚した。
「・・・濡れているな。俺を感じているか」
戯れに敏感な秘芽をくすぐれば、アイラはぴくりと反応して背を仰け反らせる。
「ふ、・・・ぁ、っ」
羞恥心が消えないのか、声を殺して悶えるアイラの様子にヒルメスは喉の奥で笑う。
理性を見失うほどに愛しい女を乱し尽くしたいと願うのは男の性だろうか。
「素直に感じればいい。お前が快楽に溺れ、ここを濡れさせるほどその時が楽だろうからな」
何て恥ずかしいことを言うのだとアイラは口に出さずに言い返した。不用意に口を開けばみっともない声を出してしまいそうだったからだ。
ヒルメスの手はもう戯れとは呼べないほどに確信も持って責め立ててくる。その容赦のない動きを、アイラは真新しい敷き布団の薄布に爪を立てることでなんとか耐え忍んでいた。
「ん、ぁ、・・・っ、あ、ぁ・・・っ!」
ぞわりとしたものが這い上がってくるような感覚に襲われて、恐怖を感じたアイラが首を竦ませる。
ヒルメスはそれを宥めながらも秘部を愛撫する指を退かそうとはしなかった。
「大丈夫だ、そのまま身を任せていろ」
「ぁ、・・・ああっ、んっ!!」
「アイラ、手を」
布団を握りしめていたアイラの手をそっと引き剥がさせて、ヒルメスはその手を自分の肩に回させる。そうして頼りなく悶える体をしっかりと抱きしめながら、極めさせるために指の動きを早めた。
「ぁ、あ、・・・っ、や、――っぁ、ああ!!」
全てが真っ白に塗りつぶされるような鋭い感覚に襲われる。ぴんと足先を突っぱねてその大波のような絶頂感を耐え忍ぶと、アイラは無意識に止めていた息をぎこちなく吐き出した。
余韻に震える体を労わりながら、身を屈めたヒルメスは汗が滲む額にひとつ口づけを落とす。
「――ん、・・・」
「アイラ、もう良いか」
明確な熱のこもった声音で囁かれるとアイラは弱い。加えて情欲を湛えて色味を増した瞳で見つめられると、もう無理だと思った。
言葉にするのは憚られて小さく頷くと、秘部の表面を愛撫するだけだった指が中を探るように動き始める。人差し指だろうか、優しい手つきながらもどこか急いている様子で中へと入り込んできた。
「、っぅ、・・・、」
「痛むか」
痛みはない。けれど狭い所を無理にこじ開けているという違和感は拭えない。
何かを探そうとする指の動きが生々しく感じられる。まだ快楽とは呼べない歪な感覚だが、言い表せないほどの歓喜を覚えた。
愛しい人に抱かれていることが、何より心を高ぶらせた。
しばらく広げるように抜き差しされていた指が抜き取られたと思うと、もう一本添えられて再び狭い中を進んでくる。今度は少しだけちりっとした痛みを覚えて、アイラはわずかに眉をひそめた。
「少しだけ我慢しろ。直に良くなる」
それからそう経たない内にヒルメスの言った通りになった。
外で味わった感覚とは違う、ねっとりとじわじわ高められていく感覚にアイラは図らずも声を上げてしまう。
「・・・ぁ、ぅ、んっ! あぁ、――っ、ぁ」
従順な体が次第にとろけ始めると、快楽を感じ始めるのは早かった。
「良くなってきたようだな」
「ふ、ぁ、・・・あ、ひぁ! ・・・あ、あぁ、」
「増やすぞ」
何をと尋ねる暇も与えず指が増やされる。圧迫感は確かにあるが、それ以上にどんどんと溜まっていく熱のやり場に困ってしまう。
終わりのない快感をどうすることもできなくて、どうにかしたくて、アイラは無我夢中で目の前の体に擦り寄った。
「ひぁ、ぁう、ん!」
「もう一度、極めておけ」
ヒルメスの指が内側の一点をねぶるように擦り上げると、一度目よりもきつい絶頂感がアイラを飲み込もうと勢い付いた。
極まる瞬間は声を上げることもできなくて、奥歯を噛み締めてひたすら耐えるしかない。
目一杯に背を仰け反らせたことで無防備に晒された円やかな膨らみの頂きに、煽られたヒルメスは貪り付いた。
「ゆっくりと深く息をしろ。最初は辛いだろうが耐えろよ」
アイラの息が整うより早くヒルメスのものが秘部へと宛てがわれる。絶頂の余韻で弛緩した体の方が挿入の負担は少ないだろうと、ヒルメスは力なく投げ出された細い足を腕に引っ掛けながら上体をかがみ込ませる。
あるいは行動が性急なのはヒルメスの理性が限界に近いからだとも言えた。
アイラの体を気遣いながらも、ぐっと勢いよく先端を沈み込ませる。
時間をかけて慣らしたためか思いのほか抵抗なく沈み込むが、奥に進もうとするほど胎内は狭くなっていく。アイラの体も痛みを感じているか、体に力が入ってしまっている様子だ。
それでも必死に受け入れようとする姿が何とも健気で、痛みに苦しんでいる愛しい人を前に罪悪感を感じながらも、ヒルメス自身は高揚を覚えずにはいられない。
無意識にずり上がろうとする腰をつかまえて引き寄せながら、ヒルメスは緊張で乾いた唇に己のそれを重ね合わせた。奥で縮こまっている舌を絡め取って、音を立てて愛撫しながら、アイラの意識が口づけに取られた頃を見計らって自身を一気に最奥まで突き入れる。
「、っ―――ぅ、ぅぐっ!!」
痛みによる悲鳴がヒルメスの口の中に消えていく。
あまりの衝撃にぽろぽろと涙を零すアイラを抱きしめながら、ヒルメスは自身に絡みついて放さない熱い胎内の動きに耐えるよう、ゆっくりと息を吐き出した。
「大丈夫か」
「、ぅ、ん・・・、」
「辛い思いをさせた、許せ。・・・痛むだろう」
「たしかに、痛いけれど・・・それ以上に、幸せ・・・、」
そう言ったアイラが自分のお腹を愛おしそうに撫でる様子に目を細めたヒルメスは内心苦笑する。まったく、これ以上煽らないで欲しいと切実に思う。
処女を奪ったばかりのアイラに無体は強いたくないが、いろいろと限界に近かった。
「・・・ヒルメス、あなたの好きに、して・・・?」
「煽るなと、言っているだろうが」
「私は、大丈夫・・・もっと・・・あなたを、感じたい」
「! ・・・その言葉、後で後悔するなよ」
中の様子を確かめるようにヒルメスは慎重に腰を動かす。まだ少し痛みを感じている様子のアイラを気づかいながらも、ヒルメスは自身の快楽を求めて動き始めた。
指で探し当てた箇所をえぐるように突き上げれば、アイラの顔から少しずつ痛苦が消えていく。
「ぁ、ん、――っ、ぁあ・・・」
控えめに嬌声が上がり、その表情に恍惚が浮かび始めると、ヒルメスはもう堪えることができなくなった。
何度も何度も、角度と強さを変えて突き上げる。狭いながらも蜜に濡れてとろける胎内を乱すように奪うように蹂躙しながら、ヒルメスは甘美に酔いしれた。
終わりが近づくほどに、ヒルメスは激しく貪りたいという衝動に駆られる。色づいたまろやかな体に吸い付くように口づけして、いくつも痕を残しながら、腕に引っ掛けていた両足を持ち上げて肩にかけ直す。
ひっくり返す勢いでぐっと前に体を倒せば、自身をより深い所まで突き上げた。初めての体に殺生だと思いながらも、本能にあらがうことができない。
求めて、求め尽くして、もっと奥深くまで余すことなく犯したいと思う気持ちを抑えることができなかった。
「ひ、ぁぁあ!!――っ、んっ、ぁあ!!」
「・・・く、っ、」
「ん、あぁ、・・・ぁ、ヒル、メス・・・っ、もぅ、っああぁ!!!」
「アイラ、――っ!!」
痕が付くほどに固く抱きしめながら最奥を突き上げたヒルメスが吐精する間、アイラは絶えず体を震わせた今までにないほど、最奥まで高められて意識が飛びそうになる。
体の奥が濡れていく感覚に至上の喜びを感じながら、アイラはゆっくりと目蓋を落とした。
この幸せを身に刻む
【あとがき】
長っ! 長すぎる!
ちょっと筆が乗り過ぎました(笑)
いくらなんでも、ちょっとはばかりがなかったでしょうか・・・ドン引きされたらどうしましょう・・・。
R-18話を書くときは、あんまり軽い話にならように注意してます。できるだけ心情描写を多くして重すぎるくらいに重い話を書こうと思っています。そして互いにとってその行為が愛情表現のひとつであるように心がけています。
拙い文才ゆえにどこまで伝わっているかは不安ですが・・・(これ、前にも書いた気がします)
さてさて、IF編が増えて来ましたので今後は時系列に並べて行くことにします。
幸せで甘い話と狂気的で暗い話をバランス良く増やしていきたいです・・・。
それにそろそろ子ども話も出したいですね。