「リンドウの花を君に」IF編

□何を以って愛と呼ぶ
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《夢主がヒルメスと一緒に行動していたら》
・本編4話のリトライ。濃い目のR18注意です!
・夢主が可哀想。加えてほとんどしゃべっていません
・ヒルメスの独白多し。最初から最後までシリアスでバイオレンス。でも愛はある
・久々に長文書いたので、ヒルメスの口調がおかしいです
・なんでも許せる、という方のみ閲覧下さい


* * *


「もう二度と手放すものか――お前は、この俺の目の届く場所にいるのだ」
 怯え切った小動物のような目をして、寝台の上に縮こまり、全身を震わせる愛しい女。
 捕らえて、囲って、自由を奪い、己の言いなりにしている憐れな女。
 憐れでたまらなく、それでも狂おしいまでに愛しいと思う。

「―――アイラ」
 透き通るほど青白い顔が、おずおずと頭を振る。
 その冷たい唇が何かを紡ぐ前に力任せに塞いで、強張った体を暴き始める。
 やわくあたたかいはずの体は痛ましいくらいに冷え切っていて、ヒルメスは己の熱を分け与えるように濃厚な愛撫を繰り返した。
 ひぃ、とお世辞にも甘いとは言えない声が頭上から聞こえてくる。
 それでも、一切構わずにまろい曲線を描く胸元に顔を埋めれば、薄い皮膚の向こうの心臓の音が確かに伝わってきた。
 ―――生きている。感慨深く、ヒルメスは思った。
 闇の中ずっと幻を追い続けていた女が、今確かにここにいて、呼吸をしている。
 そのことを思うと、言い知れぬ興奮が胸を締め付ける。
 アイラの心臓の音をいつまでも聞いていたいと思うと同時に、白い肌を食い破って、赤い血潮を飲み干してみたいとも思う。
 我ながら狂気的で、悪趣味だと分かりつつも、己の身のうちを荒れ狂う激情はとどまりそうにない。
 己の肩を押し返そうとして、逆にすがりつく形になっている細い腕も、恐怖と怯えを孕みつつも、男を誘い、媚びているようにしか見えない美しい翡翠色の瞳も、今この瞬間から永遠にヒルメスだけのものなのだ。
「たまらぬな……」
 食べごろに色付いた胸の頂きは張りがあって瑞々しく、まだ男を知らない。
 ほくそ笑んだヒルメスが迷うことなくそこに齧りつけば、アイラは短く悲鳴を上げて、嫌々をするように体を捩った。
「逃げるな。いい子にしていれば痛めつけることはせぬ」
 そう言っているそばから、アイラは逃げ出そうと俯こうと体を反す。
言うことを聞かないことに苛立ち、ヒルメスは冷たい表情を一際険しくさせた。
 恐慌状態にあるアイラにその言葉を正しく聞き取れというのは酷な話だと分かっていてもだ、意に背く態度は気に食わない。
「お前は背後から男に圧し掛かられて、貪りつくされるのが好みなのか」
 新雪の上に浮き出た骨格に舌を滑らせて、ヒルメスは冷ややかに問いかけた。
「初心だと思っていたが、中々の趣味だ」
 俺好みだ、清らでいて淫乱な、俺のためだけに咲き乱れる初花。
 舌なめずりをして、沸き起こる欲情を曝け出すと、途端に、ひく、と引き攣った息使いが聞こえる。
「泣いてはならぬ、アイラ」
 きゅっと閉じられた瞼からこぼれ落ちた涙を、ヒルメスは己でもぞっとするほど優しく拭い取った。
 拭っても拭っても己の指先を濡らすその涙は、ヒルメスが今までに見た何よりも美しい。
 恐れであれ、怯えであれ、悲しみであれ、それは己のためにのみ流されるのだ。
 狂気的で猟奇的。それでも止められない媚薬のような女。
 濡れた指先を見て喉の奥で笑んで、口に含んでねっとりと味わう。
「泣き止まぬというのなら、もっと啼かせてやろう」
 言うや否や、止めていた愛撫の手を再開する。
 寝台とうつぶせた体との隙間に唾液で濡らした手を差し込んで、腹の下へと滑らせ、淡い繁みに守られたそこへと触れる。
 息を呑んで咄嗟に足を引こうとしたアイラの上にのしかかって一切の抵抗を塞いでやれば、枕に押し付けられた口から嗚咽が漏れ聞こえてきた。
 まだ乾いているそこを探って、目当ての場所を探し出すと、ゆっくりと可愛がる。
 背中のいたるところに口づけながら、しばらく弄り続けていると、若い体は柔軟で徐々に綻びはじめる。
「お前はここをこのように濡らしていても、まだ意地を張るのか」
 拒むようにぴたりと閉じられている割れ目にゆっくりと指を差し込み、またゆっくりと引き抜いて、揺れた指に舌を這わせて味わう。
「お前のものはとりわけ甘美だな」
 さすがに何をされたのか理解したらしい、ずっと青白かったアイラの頬が一瞬で赤く染まった。
 それに気を良くしたヒルメスが、再びそこに指を沈めるとゆるゆると動かし始めた。
「ふ、……ぁ、や……!」
「どうした? 俺に触れられるのは嫌ではなかったのか? そのように甘やかな声を上げて、煽っているようにしか思えぬ」
「ちが、……ひぁ、っ」
 体のなかに沈めた指の数を増やしながら、ヒルメスはその少し上にある最も感じる場所にも手を伸ばす。
 するとアイラはいっそう甘く嬌声を上げ始め、実に初々しく愛らしい。
 枕の端をきゅっと握りしめて己の愛撫を一心に受けて悶えるアイラは凶悪で、ヒルメスの中心を熱くしていく。
 下半身の布を押し上げている己の滾りの前に熟れた果実がある。そこまでお膳立てしておいて、喰わぬ男はいないだろう。喰わずにいられるはずがない。
 このまま指で愛撫し続ければ、おそらく絶頂にのぼりつめるのも間もなくだろう。初めての絶頂を迎えさせるのもやぶさかではない。
 事実、己の中の熱情はそうしろと今も誘惑している。そう分かっていても、ヒルメスは愛撫する手を止めてしまった。
「アイラ、」
「……」
「応えぬのならそれでもいい。だが、俺はお前を奪わずにはおれぬ」
 乱暴な手でしても暴こうと思っていた。事実、怯えるアイラに無体をしようとしている。
 ヒルメスの手がぐったりとしている肩口に手をかけて体を起こさせようとすれば、抵抗するすべさえ無くした体は促されるまま仰向けになる。
 慣れない刺激と、体の奥に無理やり焚き付けられた火の熱に犯されて、アイラはぐずぐずに蕩けている。
 にも関わらず頬を濡らしている涙は未だ流れ続けている。それが熱に犯されてのものでないくらい、ヒルメスの目にも明らかだった。
「お前は……」
 お前は、その続きを言おうとして口ごもる。己が誰かに対し、たじろいだことなど今まであっただろうか。
 まして女に対して、遠慮したことなどあるわけがない。
「アイラ、お前が応えぬままでも俺はお前を愛そう……お前という存在が目の前にいて、生きている。それをどうして、手放すことができようか。怯え、震える痛ましいお前を、――例えそれが俺のせいであろうとも、どうして抱かずにいられるだろう」
 真綿で包むように優しく抱きしめるすべは知らない。そんな程度の手ぬるい真似で己が満足できるわけがない。
 この両腕で完全に囲って外界から閉ざし、己だけをその瞳に写して、己が与える快楽にのみ酔って啼いて悦んで。
 狂気的で猟奇的。そう分かっている。だが、人並みの束縛だけでは到底足りない。
 刹那の衝動に駆られて、ヒルメスは指先を細い首へと巻きつけた。
 例えばこの場でアイラを絞め殺してみれば、満足できるだろうか。動かなくなった彼女の冷たい躯を抱いて、永遠の安らぎを得られるだろうか。
 馬鹿げている。今し方、アイラの心臓が動いていることに言い知れぬ安堵を覚えたばかりではないか。
 この肌の下に沸き立つ血潮を呑み、肌の熱を余すところなく味わいたいと思ったばかりでなかったか。
「どうすればいい。お前はどうすれば、俺を受け入れる……」
 己の口からこぼれ落ちた呟きがあまりにも支離滅裂で情けなく、苦い笑みがこみ上げてくる。
 それでも目の前のアイラはそれを笑ったりはしない。ただ悲痛そうに涙を浮かべ、怯えながらも真っ直ぐにひたむきにヒルメスを見つめ返してくる。
 どうするべきか、今何がしたいのか、ヒルメス自身も分からないまま、両手は勝手に動き、投げ出されたアイラの大腿をすくい上げた。
 若いというよりも幼く、穢れの知らない真雪のそこをかき分けて、ヒルメスは自身の剛直を押し当てる。
 これ以上ないほど血の気が集まり、滾り起つそれは、己の浅ましい欲を体現し、アイラの純粋さとは全くもって合い入れない。
「っ、……!」
 目を見開いたアイラが唇を噛み締める。
 ぽろりと頬を落ちていった涙を見ながら、ヒルメスは非情に言った。
「抱かずにはいられぬのだ……許せ、アイラ―――っ、」
「ひぃ、ぐ、っぁ、――!!」
 めり、と歪な音を立てて、先端を狭いそこに割り入れる。愛撫でぬかるんでいたものの、男を受け入れるまでには程遠い。
 快楽の行く先さえもまだ知らない、清らなその体を、稚拙なその心をこじ開けて、それでもヒルメスは踏みとどまれない。
「力を抜いて、身を任せていろ」
「やっ、ぃ、っ!!」
 己の下で、アイラが痛いと泣き叫ぶ余裕もなく、ただ声を殺して打ち震えている。
 異物を吐き出そうと収縮し、限界まで引き絞られたアイラのなかは、ヒルメス自身も痛みを覚えるほど狭く苦しい。
 しかしヒルメスは、その痛み以上の快楽を得ていた。
「ああ、たまらぬな。癖になりそうだ―――破るぞ」
 思わずといったように恍惚と呟く。
 奥を塞いでいた壁を力づくで押し通せば、アイラは大きく仰け反って一拍のちに悲鳴を上げた。
「っ―――ぁあああ!!」
 甘さのかけらもない喘鳴がヒルメスに昏い満足感をもたらしていく。
 その一瞬、ヒルメスは深く沈めた剛直を一層強くたぎらせていた。
「ひい、ぐぅ、ぁ、いっ!」
 最奥まで腰を進め切ったヒルメスが、静かに息を吐く。
 そうして、痛みで意識が朦朧としているアイラを見下ろして、わずかに目を細めた。
「さぞ痛むだろうに、お前はその口で俺を呪ったりはしないのだな」
 手で押さえつけていた大腿を解放して、その手で血の気を無くして強張った両頬を包み込む。
「お前を犯す男は俺だけだ。俺以外の者にその身を与えてはならぬ。許してはならぬ。お前は、俺のもとで俺のためだけに生き、そして―――」
 噛み締められたままの冷たい唇に、ヒルメスは己のそれをゆっくりと重ね合わせた。
「―――俺自身を、生かすのだ……」
 まるでアイラの生気を奪うように口づける。口づけなどという生易しいものではないのかもしれない。
 余すところなく貪るように、呼吸を塞いで、ふっくらとした小さい唇に歯を立て、唾液を絡めて口腔を荒し尽くす。
 血よりも涙よりも、何よりも、この唇から伝わるものが、ヒルメスを生かす糧となるのだから。
「動くぞ」
 そう短く告げてから、枕を握りしめていたアイラの手を解いて自身の首に回させる。
 そうして、せまい胎内に沈めた剛直を、ねっとりと引き抜いた。
 アイラが奥歯を噛み締めて、苦しげな顔をするのが痛々しくもたまらない。
 見下ろすと卑猥なぬめりの所々が赤く染まっている。そのことに言い知れぬ歓喜を覚える。
 もう一度最奥までぐっ、と突き入れると首への付加が強くなる。
 無理やりこじ開けた胎内の痛みは容易に消えないだろうからと、ヒルメスは手早く自身の快楽を追い求めた。
 初心なアイラに本物の快楽を覚えさせるのは、じっくりと時間をかけていけばいい。
 明日でも、明後日でも、いくらでも時間を費やすことができるのだから。
「ひぅ、ぃ、――や、っ……!」
 息も絶え絶えに力なく頭を振るアイラに、これ以上長引かせるのはさすがに酷だろうと考える。
 ヒルメスは物足りなさを感じながらも、早々に自身を絶頂へと追いやった。
 達する寸前、胎内から抜き出した剛直から白濁が薄い腹へと放たれる。
 欲情の証であるそれを、意識が薄れ、思考も働いていないらしいアイラが、ぼんやりと眺めている。
「いずれは胎のなかに出してやろう」
 ―――お前が望んだ、その時に。と、ヒルメスは心の中でのみ呟いた。
「今は体が辛いだろうが、いずれ慣れよう。アイラ、もう休むがいい」
 身勝手に汚した体を手巾で拭ってやりながら、ヒルメスは幼子に言い聞かせるように言った。
 ぼんやりと宙を彷徨う視界を手のひらで遮って、瞼を閉じさせる。
 抵抗する気力も残っていないらしいアイラが、するりと眠りに落ちるのを見届けてようやく、ヒルメスは組み敷いていた体の上から退いた。
「……いずれ慣れよう、アイラ。お前の心も、体も、いずれは俺に慣れるだろう」
 そうであればどんなに幸いかと、思う。
 いずれ、慣れ、そして愛される日が来ることを、己が心の底でどれほど待ち遠しいと思っているか、アイラは知らない。
「お前を勝手に蹂躙し裏切っておいて、その後に及んで愛されたいと思うなどと、お前は言うかも知れぬがな……」
 嘲笑ったはずのヒルメスの顔に、一抹の哀傷が浮かんだかに見えたその瞬間、それはすぐさま怜悧で冷酷な面差しの下にかき消える。
 後に残るのは、夜半の静寂だけである。
 そうして、ヒルメスは、夜が明けるその時まで、愛しいアイラの横顔を見つめ続けた。 

(お前は、俺のもとで俺のためだけに生き、そして―――俺自身を、生かすのだ……)


何を以って愛と呼ぶ



【あとがき】
 久々のがっつり長文更新です。加えて、最近書いていなかったIF編「愛」シリーズのお話です。
 本編見返していたら初期文章の稚拙さに唖然……汗
 とりあえずヒルメスサイドっぽい4話を新しく執筆してみました。
 いつも通りの散文、駄目文。しかもRをねちっこく書きすぎました……
 お目汚しですみません、甘いお話を期待して下さっていた方すみません、でも鬼畜っぽいのに哀愁漂わせているヒルメスが大好きです(笑)



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