輪廻サイクル

□思い出
1ページ/35ページ

思い出

 スターサイクルが出来て二年が経った。一人の青年が書物部屋に居た。黒い髪にショートヘアー。髪と同じ色の瞳の切れ目、綺麗な顔立ちだ。本が端から端までびっしりと詰まっている中で、青年は一つの本を読んでいた。
 理想の国というタイトルの本を読んでいる、青年の目の前には、何十冊と机に置かれていた。青年は集中をして読んでいると隣に女性が座る。
 女性は青年に顔つきが似ていた。つぶらな瞳にウェーブが、かかった黒い髪。綺麗な顔立ちで人形のように思わせる。青年は女性に気づいていなく、女性が声をかけると驚いた様子だった。
「兄さん、何してるの?」
「な、なんだよ。友妃菜(ゆきな)」
「何読んでるのかなって思って」
 友妃菜はそっけない態度で答える。青年は困った顔で友妃菜を見た。本を閉じてため息をつく。
「理想の国。あっちの世界で、どうやったら尊敬されるのだろうって思って」
「大丈夫よ、兄さん。兄さんはみんなに尊敬されてるよ」
 友妃菜は微笑んだ。青年の言ったあっちの世界とは、スターサイクルというオンラインゲームのことだった。スターサイクルは二年前に青年と友妃菜、幸久(ゆきひさ)という二人にとって兄的存在の三人で作ったゲームだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ