輪廻サイクル

□もう一つの世界
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もう一つの世界

 暖かい季節。地上で一人の少年が桜並木の下で寝転(ねころ)んでいた。少し長くボサボサとした黒い髪、髪と同じ瞳を持ち凛々しい顔立ちをしていた。
少年は、流れる雲と花弁(はなびら)が散る景色を楽しみながら欠伸をしていた。昼寝をしたくなる心地よさに、一つの足音が聞こえてくる。
 少年は転寝(うたたね)をしていて、全く気付くことはなかった。転寝をしている少年に近寄ってくるのは、同年代ぐらいの少年だった。
 黒髪のショートヘアーに、青の瞳と日本人っぽくなかった。綺麗な顔立ちにスラッとした鼻立ち。少年は日本人とギリシャ人の間に生まれた子だった。その少年は、転寝をしている少年に気付かれないように隣に座る。
「琉(りゅう)、学校遅刻するよ」
 少年はそう囁(ささや)くと、琉と呼ばれた少年は重たい瞼(まぶた)を開く。欠伸をして体を起こすと少年にもたれかかる。まだ、眠たい様子の琉に少年はため息をついた。

 朝の授業が始まる二十分前に二人は入ってきた。ちょうど九時に針が指していた。琉は自分の席に座り、うつ伏せになりそのまま眠った。
 少年も自分の席に座り、琉を見て苦笑いをする。そんな二人を見ていた女子達はソワソワしていた。少年の前に座っていた同級生が話しかける。
「よっ。モテ男。今日も人気だな」
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