WRONG SIDE GAME

□スリリングランデブー
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朝練のあと、華弥ちゃんがほかのマネージャーと話しているのを聞いた。


昼休みに、DVDの整理するって。


他の子も一緒なんだろうなーって思って、でもなんとなく来てみたら、なんと華弥ちゃん一人だった。


なんでも、今日部活早退するから、そのぶんの仕事今やってるんだって。


はー、オレの彼女マジ熱心だわ。


2人きりだって分かっちゃったら、もう選択肢はひとつしかないわけで。



「高尾、これってこの間の練習試合の?」

「あー、うん多分。てかコレは?まだラベル貼ってないんだけど」



てなわけで、自ら手伝いを申し込んだ。


ぶっちゃけ細かい作業とか得意じゃないんだけど、華弥ちゃん一緒なら話は別。


最近練習ばっかりでぜんぜん一緒にいられることなんてなかったから、これは好機会だ。



「なぁ、華弥ちゃん?」

「んー?」

「2人っきりとか超久しぶりじゃね?」

「あー、そうだね。忙しかったもんね」

「はは、なんだよ素っ気ねぇなー」



オレがそう言っても、彼女は手を休めない。
自分の仕事に対してのストイックさは、やはりいつも変わらない。


セーラー服の袖ちょっと捲くって、膝上のスカートがひらひら揺れる。


オレと華弥ちゃんクラス違うし、部活中はジャージが多いから、ちゃんとした制服姿見たのも久しぶりだ。


仕分け作業をするのに邪魔だったのか、肩にかかる髪はひとつに纏め上げられている。


凛とした横顔に、きれいなうなじと後れ毛。


右に左に動き回る、すらりとした脚。


…なんか、変な気分になってきた。



「高尾」

「…っえぇ、はっはい!?」

「これなんだけどさ」



ぼんやりしていたら、数枚のDVD片手にオレを見上げてくる華弥ちゃんがすぐそこにいた。


オレがひそかに葛藤をはじめているとは知らず、無防備に上目遣い。



「中身わからないのこれなんだけど、再生してみていいかな」

「あ、うん…」

「あとなんで映画があるんだろう。しかもこれどうみてもR指定…」

「…っ……」

「………どうしたの?」

「いや……」



オレの様子がおかしいことに気づいたのか、華弥ちゃんが首をかしげて疑問符を浮かべる。


それはいいんだけど、上目のまま聞くのやめてほしいマジで。



「…高尾?」



学ランの裾をくいくい引っ張って、彼女は少しうつむいたオレの顔を覗き込むようにして伺ってきた。



「…華弥ちゃん」

「なに?」

「ちゅーしていい?」

「…っ…!?」



唐突なオレの問いかけに、華弥ちゃんの表情がぴくりと固まる。


でももうすでに、そんな反応気にかけてる余裕なんて残っていなかった。



「…ん、っ…」



返事を聞く前に、その唇をふさいだ。


久しぶりに触れる感触。やわらかい、華弥ちゃんの唇。


…これ、やっべぇ。



「んんっ、ふ…、……んっ…」



一回だけじゃ足りなくて、もう一度、唇を食むように口づけた。


一度離して、もう一度触れる。


もう一度、もう一度。角度を変えて何度も。



「ちょ、もっ…高尾!」



さすがに危ないと思ったのか、顔を赤くした華弥ちゃんが、乱れた呼吸のままオレの胸板を押し返した。


気の強そうな瞳がこちらに向けられる。


許可得てないうえに舌入れる手前だったし、怒られても当たり前。


…なんだけど。


その反抗的な態度と瞳に、オレの気分はさらに煽られた。



「なぁー…なんかさぁ」



自分の声が、いつもより低くなっているのがわかった。


考えてみれば、健全な男子高校生が、彼女と久々に2人きりになれてるこの状況。


ここが学校で、しかも慣れ親しんだ部室だからといって、今現在、誰が現れるわけでもないこの環境。


冷静にいろってほうが難しいんじゃん?



「…っ………た、かお…」



壁際に追い詰められた華弥ちゃんの顔が、少しひきつっていた。


オレが怖いの?


…だろうな。自分でもわかる。


オレ今たぶん、正気じゃないって。




嗚呼…犯してぇ。




「…オレ、ムラムラしてきちゃった」

 
 
  














「――んっ、…はっ……」



真昼の部室。


窓から差し込む明るい日差しに、外からわずかに聞こえてくる生徒たちの笑い声。


そんな背景に不釣合いな、2人の吐息。



「高尾……、ふ、んんっ…」



弱弱しくオレを諌める華弥ちゃんの声。


それを飲み込むように、唇を覆った。


ほとんど無理やり侵入させた舌で、歯列をなぞり、逃げる彼女の舌を追いかける。



「ん、やっべ…華弥ちゃん可愛い…」

「はぁっ、ん、苦しっ…」



ロッカーを背にしてもう逃げ場がない華弥ちゃんが、色っぽい声でそう訴えた。


酸欠で赤い顔と、火照った瞳。


どんどん理性が失われていく。


自分でわかるほどに、気持ちが高揚していくのが止められない。


何これ。オレ、いつからこんな性欲強くなったっけ?


…ま、それも仕方ないか。



「…なぁ、華弥ちゃん」

「…っ、な、なに…」

「付き合ってくれるよな?」

「え…」



酸素足りなくてまわってない頭で、それでも戸惑いを見せる彼女を、ゆるく抱き寄せた。


部室の隅。後ろはロッカー。前にはオレ。


もう、彼女に逃げ場はない。



「付き合ってよ」



抑えられない。止められない。


けれど、ひとつだけ方法があるとすれば、もうそれしか残っていない。


…いいんじゃね?


校内、しかも真昼の部室ってのも。


不健全で、誰かに見つかりそうで、いやらしくて………



興奮するよな?




だから、寄せた彼女の耳元に、低くささやいた。





「…最後まで、さ」
  
  
  
  




  
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