books 短編

□菓子より甘いもの
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甘い。

甘い波に溺れてゆく。

頬に添えられた手が熱い。

その熱で、私は今、ウイリアムとキスをしているのだと実感させられる。

ただ、唇をほんの少し触れあわせるだけの、遊びのようなもの。

叔父上とするキスよりも、濃厚で甘い。

ウイリアム相手だと、こんなにも違うのか。

ウイリアムの制服の裾を掴むと、口がゆっくりと離れていく。

「すまない、苦しかったか?」

「いや、平気だ」

「そうか。それならよかった」

クスリと小さく笑う顔。

元々整った顔立ちのおかげで、ウイリアムの笑った顔は格別に美しい。

「シトリー、お前の唇いつも甘いな」

その表情に見惚れていると唐突にそう告げられた。

言葉の意味を理解するや否や、顔がみるみる熱を持ち始める。

「な、なにを馬鹿なことを!」

「いつも菓子ばっかり食ってるからか?」

「そんなのは関係ない…」

「そうか?それならお前自身が甘いと言うことだな」

「ッ…、好きに言っていればいい」

赤らんだ顔を見られたくなくて、顔を逸らした。

「なんで、そらすんだ?」

顎を引かれ、気づけばまたウイリアムとキスを交わしている。

甘い熱に惑わされ、酔わされ。

そして私は、ウイリアムに溺れていく。


「貴様とは、少しばかり思考が似ているようだな」

「なんのことだ?」

「別に?何でもない」

「なんだ、変な奴だな」






甘い、甘い熱。

菓子よりもずっと甘く、幸せな味。

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