白燈の本棚

□It's a pleasure to see you again
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真選組を出て行った銀時を見送った松陽は
目一度ゆっくりと閉じた後、切ない表情を浮かべた






「私は少しばかり浮かれすぎていたようだ。もう、あの子に取って過去の人なのだな。」




「あの子の、あの子たちの未来を捻じ曲げてしまった私は本当は会う資格などなかったのだろう」



自嘲を浮かべた松陽はその場に力なく座り込んだ


「あ、あの。松陽殿、彼とはどのような?」


今まで静かに見守っていた中で近藤が戸惑い気味に声をかけた



「申し訳ありません。驚かせてしまいましたね」




「真選組の方にはお話ししましたが私は息子を探すためにここに来ました」








「?」






今の質問の答えとしてはなんだかおかしな返答な気がした


その様子を気にすることなく松陽は話を続けた






「息子と言っても実際には血のつながりはありません。それでも大切な息子です。あの子にあったのは4つか5つの頃で、そのころのあの子はまだ人ではなかったのかもしれません。」





そこで言葉を切った松陽はどこか懐かしい思い出をゆっくりと思い出していた



「なぜ、人ではないとたとえたかと疑問に思いますよね、あの子は自分が何であるかを知らなかった、いえ、鬼だと思っていたのです。戦場に現れる鬼、そう噂されていました」











「おに・・・・・」






誰となくそうつぶやいた


神楽や新八、真選組鬼という部分だけを気にしたが、松平だけはその言葉の本当の意味を理解した



それに気が付いたのだろう松陽は苦笑いを浮かべ松平のほうを向いた



「松陽さんの息子さんってのぁ、大分苦労してきたんだねぇ。おじさんには無理なことだよ」





「私とて、無理ですよ。だからこそあの子に会ったとき私は何が何でも連れて帰るときめたんです。そのころ私は私塾を開いていたのでそこで一緒にほかの子にも慣れてもらおうとも思ったんです。そこで、初めこそ警戒して誰も近寄らせませんでしたがいつからでしたか、仲のいい子が二人できたんです。私はうれしくて、その時三人とも抱きしめましたが三人ともに叩かれました」






クスリと渡った松陽の様子にそれまで話を聞いていた一同の雰囲気もやわらかくなっていた





「あの子は、人としての感情を、思考を心から信用できる友達ができたことで急速に身に着けていきました。私はそれを眺めているだけでしたが心が温かくなりました。当時の私は攘夷とまではいきませんが、天人との平等な世界をと、教えを説いていました。同じ思いを持った人とも何度もあったりもしていました、そのせいで私は幕府に目をつけられてしまったのですが」








「それから、程なくして私は捕縛されました。あの時考えるとあの子は私が会合に行こうとするときに限ってなぜか行かないでくれと私の腕を引いて止めようとしたのは何か幼いながらに感じることがあったのでしょう。捕まった私はあの時なぜあの子の言うようにその場にとどまらなかったのかと後悔しました。あの子が私塾に来て4年ほどたったころだったと思います。それからは一切の接触を許されず私は幽閉されました。」




「それと同時に私塾には火が放たれたそうです。それを聞いて私はただ祈ることしかできませんでした。これほど自分がふがいないものだとは、あの子の安否が不明のまま2,3年がたったころ私を取り戻そうと刀をとったことを聞かされました。私はそれを聞いてぞっとしました。あの子はまだ元服すらしていないのに戦場に出てしまったのだと。私という人間がそうさせてしまったのだと。」



「それから、その子の話をたびたび聞くことになりました。生きているのだということがわかる反面、それだけ過酷な道を歩ませてしまったのだという悲しみがありました。そして、ついにあの子は私の視界に入ったのです」




「そ、それじゃあ!」



声を上げた新八




「・・・・・あの子の視界の先には私の影武者が処刑されるところが映し出されていました。あの子のあの時の表情は忘れる事が出来ません。
あれは、絶望なんて言葉じゃ形容しきれない濁った色をしていました。私が言うのもなんですがあの子はあの時一度心を、人間としての感情をすべて落としてしまった、そんな感じでした。叫びたかった、私はここにいるのだとあの子に伝えたかった。それはかなわなかったのですが」






















「それからの様子を私は一切知りません。さて、近藤さん彼、銀時とどのような関係かと聞かれていましたね?」






















「あの子が、私の大切な息子なのです。」















その言葉に一同は目をこれでもかと見開いた








「さて、話はここまでです。あの子は、銀時はきっと竹馬の友のところに行ったのでしょう。それまで私はここで待っていることにします」













そういって笑った松陽は晴れ渡る空をただただ見つめていた




























それから数日後、歌舞伎町にある万事屋はその看板を下ろした



そして、銀色の髪を後ろで結わえ優しい表情を浮かべた男が師をしている寺子屋が萩に出来たとか

そこには隻眼の男が出入りしているとか

黒髪の長髪の男が叫んでいる声が聞こえたりと騒がしいながらも暖かさを感じることのできるものだとか

それを優しいまなざしで見守る初老の男性がいたとか







END


銀さん松陽先生に会えてすっごく嬉しいんだけど
一緒に戦って来た仲間の参戦理由が松陽先生を助けることだったから
何だかどうして良いのか分からなくなっちゃった感じ



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