Short-novel

□募る思いのやり場
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今年もきた。



中2のとき、同級生の日吉から告白された。
私も好きだったから、もちろん OKした。

ずっと続くんだろうな。
そう思っていた。

受験だって二人なら乗り越えられるんだろう。
そう思っていた。


でも、中3の5月。
日吉に別れを告げられた。

大会が迫っていて、今まで以上に忙しくなったから。




正直、悲しかった。
けど、負けて引退なんてしてほしくない。
最初から付き合ってはいけなかったのかもしれない。
私達は、結ばれてはいけない二人だったのかもしれない。



もう諦めよう。
今まで何回思ったことか。

諦めようと思うたびに、振り返らない日吉の背を目で追ってしまう。

往生際の悪さは人一倍だな。
付き合ってる頃、日吉に言われた言葉。



そして今日は、日吉と別れた日。
三回目の5月だ。

互いに高3。
運が悪いことに同じクラス。
しかも隣に日吉。

気まずいとかではなく、忘れられなくから嫌だった。


日吉は、相変わらずで。
無表情で滅多に話さないというポーカーフェイスをかましていた。

でも本当は、すごく優しい。

前に忍足先輩が言っていた。
「日吉は、花憐ちゃんと付き合いはじめてから、優しくなったんよ。
それにな??
滅多に笑わなかったんやけど、笑うようにもなったんやで??」


でも、別れてから日吉は笑わなくなった。
優しいのは、隠しているけど。

それに比べて私といったら、日吉と別れて全てにさめてしまった。
どうにでもなれとか、ずっと思ってる。


そして私は、今授業中ということを完璧に忘れていた。


『(ヤバい、ノート取ってない)』


慌ててノートを取り始めた。


〔キーンコーンカーンコーン〕


『あっ!!』


チャイムと同時に消されていく黒板の文字。
おかげでノートは半分しか取れていない。

『どーしてくれんのよ…。』

「おい。」


誰かに呼ばれた気がした。
振り返ってみると―――――

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