水色の糸

□恋
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「…よしっ」


昨日家に帰って夕飯を作った後、ずっと井浦君へ作る弁当の中身を考えていた。
さらに普通の人が食べる量も分からないので、京介さんに色々聞いたり。
材料を集めたりと、本当に精神的にすり減った。
弁当の定番、から揚げ、玉子焼き、サラダとりんごちゃんっていうとっても簡単なものだけど。
でも、こんな簡単なものを作るのに私はとっても緊張して失敗しまくった。
井浦君に食べてもらうんだと思うと、ドキドキして手元が狂ったりして。
まさかの手は絆創膏だらけに。


「楓ちゃんは…あれだな、料理は苦手じゃないよね」

「どっちかというととても得意です」

「だよね、昨日の料理すごい手際よかったしね」

「ありがとうございます」

「……油に手を突っ込みそうになったり手を切断しそうになるのはいくらなんでも素人でもやらないんじゃないかな」

「………間一髪のところを助けてくれてありがとうございました」


いつもどっちかというと凝ったものを作っているので、いつも通り作ろうとした。
いつも通りじゃなかったということは、私の分以外にも作らないといけなかったこと。
井浦君に作ってるんだと思うと意識しまくって軽く死に掛けた。
京介さんが異変に気づかないでまだ寝てたらと思ったら、ぞっとする。
凝った料理は却下され、簡単なものに変えられた。
リスクは減ったが、から揚げをあげるときに沸騰してる油に手を突っ込みそうになったり。
卵を手で握りつぶしてしまったり。
野菜を切って自分の手を切断しそうになったり。
りんごの皮をむくときに自分の手の皮をむきそうになったり。
京介さんがいなかったら私の手は今頃腕についていない。
こんなにも失敗ばかりしたのは人生で初めてだ。
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