水色の糸

□会いたかったよ、君たちに
1ページ/9ページ

ここは片桐高校の生徒会室。
本来ならば生徒会のメンバーしか立ち入ることはないその教室は、カラフルに彩られていた。
その中で一人、緑色の髪をした男子がいきなり叫び始めた。


「あー!彼女ほしいよー!」

「だから粘土買って来てやろうか?」

「だーかーらー!生身の!人間!」

「井浦うるさい!」

「えぇ!?」


茶色の彼女、堀京子は、女子トークしていたのを邪魔されて、至極不機嫌そうだ。
いや、実際不機嫌だろう。
そしてその隣で黒色の宮村伊澄がなだめている。
そんなことお構いなしに他のメンバーは各々のことをやっている。
見慣れている光景なのだろう。
そして、その中で紫の石川透がこの部屋のいつもとの違いに気づいた。


「なぁ、あんなとこに鏡なんかあったか?」

「鏡?仙石君しってる?」

「いや…なかったはずだけど、先生か誰かが運んだんじゃないか」

「皆無視!?かなしうら!」

「でも、綺麗な鏡ね」

「そうね、何で生徒会室なんかにおいてったのかしら」

「………」

「い、井浦君、大丈夫ですか?」

「あかねー!やっぱ俺にはお前しかいねーよー!俺どう!?」

「え、あの…す、すみません」

「だよね!?」


みんなが鏡に注目している間にも、緑の彼、井浦秀はギャアギャアと騒いでいた。
実際、今彼を相手にしているのは二重色の柳明音しかいない。
みんないつもはそこにあるはずのない鏡に夢中になっている。
特に特別なわけでもないが、その鏡はみなの注意を引き寄せた。
そして、井浦も興味が涌いたのでその輪の中に入る。
そこにあるのは、確かに綺麗ではあるが、普通の鏡で。
普通なはずのに、目が離せなくなった。


「なんか、不思議な鏡ね」

「あ、魔物が出てきたり?」

「宮村、アニメの見すぎだ」

「いい線いってると思ったんだけど…」

「あっ、じゃあ井浦の彼女になってくれるっていう人が出てきたり!?」

「井浦君は夢見すぎだよ」

「仙石さんってば夢なさ過ぎでしょ…」

「ねーねー仙石君、鏡光ってない?」

「……言われてみれば、少し光ってるような」


鏡は、注意しないと気づかないくらいに鈍く光っていた。
光の反射かと思ったが、そうではない。
皆が不信がって鏡から離れていくが、井浦だけそこを動こうとしなかった。
まるで、鏡の中に何かがいるかのように、目を見開いて。


「井浦?何して…」

「堀さん、井浦正解かも…」


そう言って、井浦は鏡に向かって手を伸ばした。
普通ならば、鏡には自分に向かって手を伸ばしている自分が写るだろう。
だが、そこには何もなかった。
そして、井浦が鏡に触れると、波紋が鏡に広がった。
皆、その不思議な光景に目が離せなくなった。
井浦の腕が、鏡の向こう側にまで伸びたから。
向こう側に何があるのかは、井浦以外は見えていない。
さっき井浦が言った言葉の意味を考える人さえいなかった。
井浦が腕を引くと、現れたのは井浦の腕だけではなく。
目の覚めるような水色の髪をした少女だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ