時間を止めて

□秘密
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TAO side



建物を出ると、曇っているせいか空が重たげだった。
電話の相手は雑誌のカメラマンをやっているリュウ・レイさん。
二週間くらい前に12人での撮影をした時、僕らの担当だった人だ。
中韓ハーフのリュウさんは、Mのメンバーによく話し掛けてくれてた。リュウさんは韓国語が苦手な僕が聞き取りやすいようにゆっくりと話してくれてとてもいい人だと思った。思ったんだけど、イシンヒョンはあんまり彼の事を快く思わなかったらしい。
RY「やぁ、タオくん」
TO「どうも」
イシンヒョンが、リュウさんとはあまり関わらない方がいいって言ってた。イシンヒョンは滅多にそんな事言ったりしないから気には止めていた。最初は深く考えていなかったけど、なんとなくそれが分かった気がするんだ。
TO「あの、リュウさん。僕もう帰ります。それに、その」
RY「えーー、そんな事言うの??」
僕はこの人の少し周りと違う雰囲気が苦手だった。
TO「すみません」
RY「…そっか。じゃあ仕方がないね」
リュウさんの気を悪くしてしまわないように、僕はなるべく早く部屋を出ようと彼に背を向けた。
その時、何かが空気を切る音と共に背中を殴り付けられた。ぐっと息が詰まって、身体を痛みが駆け上がる。
TO「…、…っは、…ぁ…っ」
やっと息を吐き出すと、鈍痛が腰から背中にかけてをじわじわと波打つように襲う。
僕は状況が呑み込めなくて、霞む視界の端でリュウさんを捉えた。
RY「仕方がないよね?タオくんが悪いんだよ?」
痛みで声が出ない。
RY「ねぇ、これ見てよ。私が作ったんだ」
よく出来てるでしょ?、そう言って彼が取り出したのは数枚の写真。それを見た途端僕の視界が段々とクリアになった。
それは、僕らの写真だった。
楽しそうに笑うルハニヒョンと、その隣に佇む女の人。
チャニョリヒョンと女の人が手を繋いで歩く姿。
女の人と抱き合うイシンヒョンや、キスをするクリスヒョンの写真。
ギョンスヒョンや、ジョンデヒョン、セフナ、ジュンミョニヒョンも。
ミンソギヒョン、ジョンイナに
ベクヒョン、それに僕まで。
それぞれご丁寧に相手の顔はボヤかして僕らだけが目立つように撮られている。勿論こんなものニセモノだけど、ファンの人たちがこれを見たらどう思うだろう。
RY「…意味、分かるよね?」
リュウさんがゾッとする位冷たい声で言った。
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