ナマモノ小説
□瞬き
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誕生日に、恋人からはメールだけ…。
メール一件のみという簡素なプレゼントだった。
あんまりやないか?
光一のアホ…。
メールなんか全然嬉しないわ。声聞きたかったのに。
電話くらいくれてもええやんか…。
アカンなぁ…。
なんか自分ナーバスになってる。
ずっと顔合わせてへんから…
光一が忙しいのわかってんのに、俺より仕事なんやなって…女々しいコトばかり考えてしまう。
寂しい…。
逢いたい……。
お前は俺に逢いたいって思ったりせえへんの?
俺ばかりがお前に侵蝕されてるような気ぃする。
涙で視界が歪み、光一との楽しかった出来事が色褪せていく。
切なかった…。
「…で、瞬きなん?瞬きするたびに大切なものが消えていく…って…。お前…そんな寂しいこといいなや。」
光一は、目の前でふてくされている恋人に呟いた。
「…これはやな〜、いわば、俺を長い間ほったらかしにした薄情な恋人への、俺の心の叫びやねんな。冷た〜い恋人を想う切なさを訴えてんねん」
思ってても、普段絶対言いそうにないコトを、ペラペラと饒舌に語る剛に、めっちゃ怒ってんな…と察した光一は、焦って
剛の肩を抱くと自分の方に引き寄せた。
「悪かったって!
ホンマは電話したかってん。…せやけど、お前の声聞いて我慢出来るんか?言うたら、自信ないし…。俺もツラかったんやで?」
言いながら光一は、剛の頬にキスをする。
剛は、久し振りの光一からのキスに、内心嬉しくて嬉々としていたのだが、憮然とした表情を崩すコトなく、ぼそりと呟いた。
「ホンマやろか。…オマエ嘘吐きやからな…」
「な…何を言うてるんですか!!お前一筋のこの正直者を捕まえといて…ヒドいわ〜」
「…よう言うわっ!この仕事人間がっ!ど〜せ俺なんか…」
そう言って剛は俯いた。
「ちょっ…剛っ!?」
俯く剛を慌てて覗き込むと、悪戯っぽい笑みを浮かべた剛が、グイッと顔を引き寄せ、光一の唇に唇を合わせてきた。
突然の剛からのキスに、光一は固まる。