ナマモノ小説

□帰る場所
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 夕暮れの街、独りきりぼんやり公園のベンチに座って剛は、アスファルトの道路を行き交う車や、歩く人達を眺めていた。

 人間ウォッチ…とまではいかないが、こうやって世間を枠から離れた、違う角度から見るのが好きだったりする。

 おかげでMフェアで森山直太朗に「剛くんは、世間を斜めに眺めて興奮してる」…と、アヤシい人のように言われ、あとでかなりヘコんだのだが…。

 そういえば…光一はクールやって言われとったな…。
 クールなんは表向きやのに。
 俺の前では、ウザいくらい熱いんやで…。

 周りが知らない光一の一面を知ってるのが、嬉しくて…剛は密かにはにかんだ。

 世間のいろんな人のフィルターに、自分はどのように映っているのだろう。果たしてソコにいるのはキンキの剛なのか…アクターとしての剛なのか…剛 自身、自分はどこに向かって進みたいのか、どう在りたいのか解らなくなる時がある。

 ただ、ひとつ言えるのは…キンキの剛には光一が必要だということ。

 光一がいるから、自分は頑張れる。
 光一がいるから、剛が在る。
 
 どんなに離れていても、違う視野で別のことを話していても、例え世間から不仲だと噂されても…帰る場所はここなのだ、そう自分が自負している。

 光一はどうなんか、わかれへんけどな…。


 オレンジ色に染まったビルの街の眩しさに目を細める。
 都会の息苦しさにも慣れてしまった。寂しく思う気持ちも、今は心地よくさえ思う。

 寂しいから…帰りたいと思えるのだから。

 キンキの剛に。


 そして、帰ってくる光一を迎え入れるのだ。笑顔で。

 ようやっと帰ってきたな。

 待ったか?

 待ちくたびれたわ。

 待ちくたびれた分、嬉しいやろ?

 …アホか…。



 お互いのやり取りを想像して剛の口元が優しく緩んだ。



   END
 

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