ナマモノ小説
□帰る場所
1ページ/1ページ
夕暮れの街、独りきりぼんやり公園のベンチに座って剛は、アスファルトの道路を行き交う車や、歩く人達を眺めていた。
人間ウォッチ…とまではいかないが、こうやって世間を枠から離れた、違う角度から見るのが好きだったりする。
おかげでMフェアで森山直太朗に「剛くんは、世間を斜めに眺めて興奮してる」…と、アヤシい人のように言われ、あとでかなりヘコんだのだが…。
そういえば…光一はクールやって言われとったな…。
クールなんは表向きやのに。
俺の前では、ウザいくらい熱いんやで…。
周りが知らない光一の一面を知ってるのが、嬉しくて…剛は密かにはにかんだ。
世間のいろんな人のフィルターに、自分はどのように映っているのだろう。果たしてソコにいるのはキンキの剛なのか…アクターとしての剛なのか…剛 自身、自分はどこに向かって進みたいのか、どう在りたいのか解らなくなる時がある。
ただ、ひとつ言えるのは…キンキの剛には光一が必要だということ。
光一がいるから、自分は頑張れる。
光一がいるから、剛が在る。
どんなに離れていても、違う視野で別のことを話していても、例え世間から不仲だと噂されても…帰る場所はここなのだ、そう自分が自負している。
光一はどうなんか、わかれへんけどな…。
オレンジ色に染まったビルの街の眩しさに目を細める。
都会の息苦しさにも慣れてしまった。寂しく思う気持ちも、今は心地よくさえ思う。
寂しいから…帰りたいと思えるのだから。
キンキの剛に。
そして、帰ってくる光一を迎え入れるのだ。笑顔で。
ようやっと帰ってきたな。
待ったか?
待ちくたびれたわ。
待ちくたびれた分、嬉しいやろ?
…アホか…。
お互いのやり取りを想像して剛の口元が優しく緩んだ。
END