ナマモノ小説
□笑って 笑って
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誕生日にもろた剛からのプレゼントは…妙な色紙やった…。
『植えないで、ヘアー 』『被るより生やしたい』『毛、みんな元気かい?』『ほんまにたよりにしてまっ毛』『ボクの頭には髪がある?』『毛、がんばれよ』
…って、なんやねん?これ!?
どうやら「やめないでPure」や「愛されるより愛したい」etc…をかけたみたいやねんけど…頼むからフツーのプレゼントにしてくれへんかなぁ。というのが俺のホンマの気持ちや。しかもご丁寧に全部最後に『剛』とサイン入り。…抜かりのない奴っちゃ。
ホンマ…剛はおかしなモンばっかり俺に寄越してくんねん。
ま、俺も毎年のことやから?今年は何やろなって楽しみなとこもあんねんけど。
出来たら…3日くらい剛好き放題みたいな…そんなんあったらええのになぁ。
なんで3日なん?
っていうツッコミは却下やで。
なんとなく…3日くらいって頭に浮かんだダケやねん。
3日間ずーっと剛と一緒に過ごすんがええなぁって。
俺らあまり外出せぇへんから、どっちかの家でぐだぐだ過ごすんもアリやけど…剛の大好きな奈良を一緒に歩いてみたい。
なんでかって?
BSでなんやらやってるやん?
あれな、仏師とかいろいろ出てくんねんけど、大好きな奈良の話すんの嬉しくてしゃあないんやろな…剛のヤツ、始終ニコニコ笑顔やねん。
妬けるわ。
おまけに、仏師のお兄ちゃんめっさオトコ前やし…。
ああ…俺以外のオトコの前でそんな可愛い顔見せんとって!
心の狭いヤツやなって怒られんのわかってんねんけど…そらしゃあないわ。
側にいたいけど…おられへんねんもん。
また舞台始まるし…。
やから…一緒に奈良歩いて一緒に共感したい。
光一は口を尖らせてため息をつくと、隣で寝ている剛を抱き寄せた。
無垢な表情の寝顔とは裏腹に、白い肌には情事の名残を思わせる痕が点々と散らばっている。
そのアンバランスさに惹かれる。
人差し指で自分がつけたそのひとつをそっと撫でてみた。
「ん…」
鼻にかかった甘えた声が剛の唇から漏れ出た。
光一しか知らない剛の無防備な声と姿に口元が緩む。
寂しがりやの恋人は笑いを好む。
それは、自分が笑っていたいというあらわれだ。
毎年のおかしなプレゼントは、相手と一緒に笑いたい、共有したいという願いなのだ、と光一は思う。
来年も…笑って誕生日迎えさせてな。
光一は寝てる剛の頬に軽くキスをした。
END