ナマモノ小説
□ビロードの闇
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「なあ…なあって…光一…光一」
剛が俺の頬をペシペシ叩いた。
「なんや剛…。寝られへんの?」
俺は剛を抱き寄せると、早よ寝なさい…と、腰を優しく叩いてやった。
久しぶりにオフが重なった俺らは、久しぶりに家デートを楽しみ(家デートいうんかな…。何しろ俺ら2人とも外出すんの億劫やから)久しぶりに身体を重ねて、ベッドの中で抱き合って、気怠い疲労感に夢現としていた。
「ちゃうって…。アソコに…なんかおんねん」
「はあ!?」
俺はのっそり身体を起こし、目を細めて剛が指し示す先を見た。
ほんまや…。
なんかおる…。
咄嗟に叫んだ。
「あ…悪霊退散っ!南無妙法蓮華経!!ギャ〜テイギャ〜テイ…オン・アビラウンケン・ソワカ〜!」
「なんやそのデタラメな呪文…」
呆れたような剛の顔に笑いながら返した。
「なんかね…、呪文らしいこと言うたら消えるかな、思って」
「消えてへんけど?」
仕方なくそろそろとベッドから身体を起こした俺は…じわりじわりと謎の物体に近付いた。
暗闇の中で蠢く黒い物体…。
恐る恐る覗き込むと、ソイツはガルル…と唸った。
暗闇に慣れた目がハッキリとソイツを鮮明に映した。
頭部が3つある小さな犬…。
「なんやコイツ!?」
俺の声に後ろで身を潜めていた剛が駆けつけた。
「ぅわっ!めっちゃ可愛い〜っ!」
あろうことか、剛は不気味な物体を躊躇うことなく抱き上げた。
「なにしてんのお前っ!」
俺の声に驚いた剛は、なに?と首を傾げた。
「頭3つもあんねんで?フツーの犬ちゃうやんっ。咬まれたりしたらどないすんねんっ!!」
「やって…可愛いんやもん」
剛に頭を撫でられた不気味な犬は、気持ちよさげな唸り声をあげて剛の指を舐めた。
ひえぇぇーっ!!
何ちゅう図々しい犬や。
俺の剛の指舐めるやなんか…。
腹が立った俺は、剛からソイツを引き剥がそうとして、カプッ…とやられた。
と、そこへ謎の男が現れた。
男はTOKIOのリーダーそっくりな顔していて、突然現れたというのに違和感なくその場の空気に馴染んでいた。