ナマモノ小説
□つよニャン(パラレル)
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人間誰しも秘密があるものだ。
当然、俺にも人に言えない秘密がある。
本当は皆に言いたい。
言いたいのに言えないのだ。
というのも…。
実は…
俺の恋人は
『ネコの姿をした天使(♂)』
だったりするからだ。
えっ!?おかしいやろって?
そんなん言われても、ホンマなんやからしゃあない。
彼の名前は『つよ』
ほんまは『ケリー』っていうらしいけど、俺は『つよ』と呼んでいる。
つよは、降りしきる雨の中、びしょ濡れで震えていた捨て猫だった。
悲愴感溢れる瞳が俺を見上げる。
何とも言えない瞳をしていた。
暫し見つめて瞳を逸らした。
俺は猫は好きなのだがアレルギーを持っているので、飼いたくても飼えない。
猫に期待させてはいけない。
可哀想やけど、ごめんな…と、思いつつ横を通った。
『にゃあ…ッ…』
『…にゃあ…っ…』
今にも消えそうな声が俺の後ろ髪を引っ張る。
『にゃ…』
ああああ…あかん…!
ほっとかれへん!!
アレルギーが出るのを承知で抱きかかえた。
クシャミと鼻水に耐えながら、風呂場で身体を洗ってやると、泥だらけの汚い猫は真っ白な猫だった。
柔らかいタオルで拭いてやると、潤んだ瞳が嬉しそうに俺を見た。
「腹減っとるやろ。ミルク飲むか?」
『にゃあ…』
よしよし…と、小皿にミルクを注いで口元に運んだものの、体力が消耗してるのか、猫はなかなかミルクを飲もうとしない。
「お〜い…頑張って飲んでくれよ。…元気になってくれへんと、拾た意味ないやんけ」
そう言って喉元を擽れば、気持ちよさげにゴロゴロ鳴いた。
「やば…。痒なってきた」
ポリポリ掻きながら、
「おまえが猫やなかったらウチで飼えるんやけどな〜。誰か飼うてくれるヤツ探さなあかんわ…」
そう呟くと、猫は寂しげに俺を見上げた。