ナマモノ小説
□刹那の中で(パラレル)
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「助けて欲しい」
10年近く音沙汰なしだった薄情な友人から連絡が来た。
いきなり助けて欲しいとは物騒だな…。
嫌な胸騒ぎがし、俺は走るように屋敷を飛び出た。
彼とは幼なじみだ。
もともと家が近かったコトと、親同士が仲が良かったコトもあり、兄弟のように育った。共に遊び、学習し、共に夢を語った。
控えめで真面目な彼の兄と違い、我が強い彼は、相手を選ばすズバズバとモノを言うので敵を作るコトが多く、俺と彼の兄とでよく尻拭いをさせられたものだが…。
まさか、この歳になってまで…と、知らぬうちに眉間に皺を寄せていた。
下僕の蝙蝠に案内してもらい、彼の住む屋敷へと足を運んだ。
扉の鍵は下僕が開けてくれた。
足を踏み入れた途端に感じた違和感。
むせかえる甘ったるい匂い。
俺は咄嗟に鼻と口を押さえた。
なんだ…この匂いは…。
血…!?
熟した果物から溢れる甘い蜜のような…。
急激に喉が渇いた。
「おい…、入るぞ」
扉を開けて俺は絶句した。
「あっ…、あァ…っ…!」
耳に飛び込む嬌声。鼻腔を擽るとろけるような匂いと精の匂い。
彼はちょうど行為の最中で…組み敷いた白い身体に自分の精を放ったようだった。
「…悪い。外で待ってれば良かったな」
「いや…別に」
彼がゆっくりベッドから起き上がった。
どんなオンナを抱いて…。
これほど甘い匂いを放つオンナはそういない。
相手が気になり、ちらりとベッドを覗いて俺は絶句した。
「おまえ…」
何故なら
彼が組み敷いていたのは、彼の甥で…。
カレは、身体中咬み痕で血だらけになっている。
俺はぐったりとして動かないカレを抱き上げた。
「おい…、しっかりしろ!!」
抱き上げた途端に、彼の血の匂いが脳天を突き抜けた。
喉が……。
欲シイ。欲シイ。
彼ノ血ガ………。
「あかんで。コイツは俺のなんやから」