ナマモノ小説 企画もの『cocktail』
□アディントン
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今頃なにしてるんかな…。
僕は儚い夢人を想う。
僕を淫らに誘いながら…
いたいけな瞳で僕を惑わす愛しい人。
僕の名を呼びながら
愛しい人は別の男を気にかけてる。
わかってる。
わかってんねん…。
彼の男に熟れた身体は…抱けば抱く程にあの人の色を濃くする一方で、どんな風に抱かれてるのか、どれだけ深く愛されてるのかが、嫌でもわかってしまう。
それでも…
こうして僕が触れるのを、彼が許してくれる限り、僕は彼を諦めることが出来ない。
愛しているから。
「やっ…准一…ッもっと…」
そう言って彼は…激しく抱かれたがる。
優しく抱かれるのを拒むのだ。
優しく抱くと戸惑い、不安な表情をする。
恐らく彼は、優しく愛されるのには馴れていない。
だから…僕は…ワザと優しく愛してやるのだ。
彼の身体に染み付いた、あの人の嗜虐的な痕を消すように。
優しく淫らに…僕の色で塗りつぶすように…。
早く…僕に溺れて…。
僕だけを見て……。
僕が触れた指先を思い出して…。
潤んだ瞳で…濡れた身体で…
僕を欲しがって…。
END
アディントンは、ドライとスイートの対極にある2種類のベルモットを使うカクテル。甘辛がミックスされた微妙で複雑な味わい。
三角関係を連想させた意味深SSです(笑)