ナマモノ小説

□朧月
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 光一が俺を見る瞳が…だんだん違ってきてるような気がする。

 気のせいやろか…。

 日増しに熱っぽくなってきている光一の視線に、剛は戸惑い…顔を赤らめた。

 「なにジロジロ人の顔見とんねんっ!!見るなっ!」

 キッと剛は光一を睨んだ。
 睨んだ瞳の艶めかしさに、光一がひそかに喜んでいるのも知らずに。

 「見るな、言われたら余計見たなるねんけど?」
 「…………」
 「なんで見たらあかんの?」

 光一の率直な質問に剛は閉口する。

 なんで…って…。
 そんなん言うたら…自意識過剰やって笑うやろ、おまえ。

 「恥ずかしい…」
 「は?」
 「人に顔見られんの恥ずかし言うてんねんっ!!」

 剛が真っ赤になった顔で叫んだ。

 「アイドルやのに見られんの恥ずかしいん?」
 「あほっ!!おまえやからやっ!!」

 言ってしまった後で、剛はしまった…と、口を閉ざした。

 「俺やから?」

 ニヤニヤ笑う光一を見て、くっそ〜!と歯軋り噛んだ。

 「俺に見られると、剛は恥ずかしいんや?なんで…?」
 「……るさいっ…」

 光一のなんで攻撃に、ますます顔を赤らめた剛は、逃げるように楽屋から走り出た。


 あ〜あ…。
 逃げんでもええのに。

 光一はちょっと嬉しかったのだ。
 自分に見られて恥ずかしい…と顔を朱に染める剛が可愛くて。

 俺なんか…剛に見られたら恥ずかしいどころか、嬉しくてたまらんけどな。
 剛が視線逸らすまで、ワザと見たんねん。

 あ…。なんかええな。
 俺の視線に耐えれんようになって、瞳を逸らす剛…。

 今夜はソレでいこか♪

 いこか…って、何処いくねんって、剛がいたら突っ込まれそうやな…と、光一は笑った。


 可愛い剛…。

 俺の気持ち知ったら引くやろか…。


 光一の笑った顔が一気に沈んだ。
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