ナマモノ小説

□朧月
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 なんやムカつくっ!!光一のあほっ!!

 走りながら剛は、居ない本人にぶつぶつ文句を言っていた。

 だいたいやな〜
 光一があんな瞳で俺のこと見るから…。

 光一の自分を見る瞳を思い出し、カッと顔を赤くする剛。

 光一は…周りが羨むような顔立ちをしているというのに、自分の顔には無頓着だ。
 乾燥して肌がガサガサになってようが、疲れて憔悴してようがお構いなしだ。

 俺なんか女の子張りに気ぃ使ってんのに…。

 …誰やって…光一みたいなイケメンにじっと見つめられたら、恥ずかし思うんちゃうん?

 光一は…平気なんやろか?

 仕返ししてやりたい…。

 けど光一は…俺なんかがじっと見とったって…全然平気なんやろな…。
 
 剛の顔が曇った。


 まさか光一が剛に見つめられたい…と願ってるとは、夢にも思ってない剛だった。



 『アイドルやのに見られて恥ずかしいん?』

 光一の声が脳裏に響く。

 やって…光一は…キラキラしてるし、アイドルかもしれへんけど、俺は…自分がアイドルやなんて思えへんもん。

 俺は俺や。
 どんなに周りのニーズに応えようにも、限界がある。
 光一に対抗してキラキラオーラ出そうったって…。
 無理や。そんなん俺にはない。


 不意に剛は泣きたくなった。


 羨ましいワケではない。
 ただ、時々せり上がってくる圧迫感…。
 どうしようもなく…光一の隣にいるコトに息苦しさを感じてしまう。

 俺でええんかな。
 不釣り合いやないかな…。

 決して自分を卑下するワケではないのだけれど…つい、そんなコトを考えてしまう。
 そして…そんな自分が嫌なのだ。


 あかん。
 また負の感情に流されそうになってる。

 ふぅ…と、ため息を付いていたら後ろから肩を叩かれた。
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