残酷な運命を抱えた奇跡の超能力者の望み

□学習装置の知識からすれば
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あれから瑠雨は幻想御手のことが頭から離れない。


「ちょっと、早く服脱いでくれる」

『え、あぁ。すみません』

「よくもまあここまで派手にされたことね」

『誰のせいかな、俺、貴方を守った覚えがあるんですけど』

「どうでもいいから早くして。」

瑠雨が素直に服を脱げば脇腹に綺麗な痣が現れた。
どうでもいいって・・・と思いながら素直に治療を受けている瑠雨は未だに幻想御手のことが頭から離れないでいた。

ガチャリという音との方向に目を向ければ垣根が顔をしかめながら近づいてきた。

「何、お前また怪我したの」

「別に能力で負けたわけじゃないわよ。」

無言の瑠雨の代わりに心理定規が瑠雨の身体に処置を施しながらそう言った。
瑠雨は能力だけなら申し分なく、学園都市第八位というのも頷けるのだが何分肉弾戦が苦手なのだ。

格闘などの授業では瑠雨は 優秀の方で武装集団程度だったらあしらえる程度の力量だが暗部や闇の住人の肉弾戦はそんな格闘の型にハマっていなく素早いので慣れていないと辛いものがある。

「そりゃあそうだろうよ。
コイツはこれでも学園都市第八位の超能力者なんだ。

っていうか瑠雨、お前なんでベクトル変換使わねーのよ」

ぐりぐりと頭を撫でられる。

『いや、あそこは足場的にちょっとやばかったっていうか・・・。』

「そうね、君が思いっきり能力使ったせいで足場も不安定だったし。
むしろそこでベクトルの向きなんて変えられたらお互いにお陀仏だったわ」

『刺のある言い方しないでください。』

ため息をついている内に治療も終え、服を着ているとき、瑠雨の携帯が鳴り響いた。

『はーい。』

《お兄様。幻想御手について現在生存している個体で勢力を上げて調べましたところ、幻想御手は存在していることがわかりました。》

『お疲れ。
で?実在するってことは・・今までの書庫の情報のズレも幻想御手が関わっているってことだよね』


《はい。しかし--使用者は皆---》

妹に言われた言葉に言葉を失いことしかできなかった瑠雨は息が詰まる思いをした。

『----は?』

-----使用者は皆昏睡状態に陥いっています。



『ちょっと待て。どういうこと』


《そもそも幻想御手というのは物体・・・そう、幻想御手”そのもの”は手に取れるような物体ではありません。
つまりは形を成していないのです。
ですので・・・使うというよりはーーーーー聴く。の表現の方が正しいでしょう。》


『・・・・・ってことは、まさか・・・』


《はい。幻想御手は・・・”音”つまりは・・・音楽なのです。》


その瞬間パソコンを広げ、音楽ダウンロードのページ・・・music link news のページを開いた。それと同時に隠しページとなっているnewsをクリックすれば真っ黒いページが現れ、幻想御手にたどり着く事ができた。

level upper
作者は不明だがこれで間違いないだろう。


『これ・・・、か』


瑠雨はパソコンへと電流を送り込む。この建物のセキュリティは大体はD〜B程度。
Bともなれば厳しくは感じるがやらなくてはいけないのならやるしかない。
そう思い演算に集中する。

『サーバーを壊してハッキングからHPの管理セキュリティを乗っ取った後このHPを閉鎖させるしかない。

それともうひとつ頼まれて欲しいんだ』

《はい。なんでしょうか。》

『昏睡状態の患者の脳波パターンを全員分もらってきて欲しい。

学園都市第八位にして、最強の電撃使い御坂美琴の弟”として”の俺の名前と・・・”幻想御手”のことを言えばあそこの病院なら渡してくれるはずだから。』

冥土返し。
瑠雨をクローンだと知っている極僅かの存在の一人である。
だからこそ瑠雨は信じた。
そしてそっとパソコンから手を離す。
再度URLをクリックするがNot Foundの表示を見、瑠雨は安心したように微笑んだ。


『取り敢えず、これで・・・昏睡する被害者は減るはず・・・』

後は脳波パターンのデータを貰ってそれを分析するだけだと思っているといきなり睡魔に襲われている感覚に陥る。

垣根はそんな瑠雨の頭を再度撫でた。瑠雨は子供扱いすんな、とも思ったが今はそれが心地よくてついつい目を閉じてしまい意識は闇へと沈んでいった。

「やっと寝たわね」
「あぁ。」

心理定規は呆れたようにため息を付くのと同時に垣根同様安心した表情を浮かべた。

「今日一緒に同行してて良かった。
運がなかったらこの子死んでたからね。」

「睡眠不足ほど人を弱らせるもんはねぇからな」

「全く・・・どうしてこの子は自分に対してはこんなに適当なのかしら」

睡眠不足の上に能力行使はかなり身体にきたのだろう。瑠雨は規則正しい寝息を立て垣根に身体を預けていた。


どうして、などと二人は理解しているのかもしれない。瑠雨が自分を大切にしない理由にはきっと何処かでは気づいていてそれでもそれに自分たちが気づいていないように偽っているということも。



きっと、垣根も、心理定規も、十分に理解している。
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