残酷な運命を抱えた奇跡の超能力者の望み
□最悪の
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8月19日 夜。
一つの施設が爆破された。
恐らく、アイテムの構成員の一人
「フレンダ=セイヴェルン」の仕業だということに瑠雨は眉を寄せたが、瑠雨はもう一つの施設へと向かった。目的は唯一つ布束砥信を守るためと余裕があれば施設の破壊。
電子ロックを解除し、施設内のセキュリティにハッキングを仕掛ければ内部は簡単なほどに混乱してくれた。
逃げ惑う研究者共を薙ぎ払い、布束砥信が居るであろう場所へと走り出す。
そしてその扉の前まで来るとそれは自分が開ける前に開けられた。
研究者が布束を抱えているのを見て、
即座にその男を殴り気絶させると同時に布束を確保し一つのディスプレイに目を向けた。
[Error.Break_code No19090.
WARNING!
(警告)
上位固体20001号のものでないコード]
という警告ウィンドウが出ていたことに瑠雨は目を見開く。
まさか・・・この人は・・・妹達へと感情のインストールをすることで実験を終わらせようとしたのか・・・?お兄様の優しさを、信じてまで。
不意に気配を感じて布束を廊下の隅に寝かせた。
そして振り返るとそこにはアイテムの構成員の一人が立っていた。
「貴方が侵入者ですか?」
『・・・絹旗最愛
暗闇の五月計画の・・・被験者の一人か』
その言葉にピクリと反応した絹旗に対し瑠雨は立ち上がって静かに笑みを浮かべた。
『悪いけど、ここにいつまでも居られないんだよ。お前んとこのリーダーぶっ飛ばさないとだし、』
「スクールの構成員がアイテムの仕事の邪魔をする・・・その必要性は無いはずですが。それともそっちの『いや』?」
『俺の単独行動だ』
「はあ!?超意味がわかりません!!
自分とこのリーダーを差し置いて何してんですか!!?」
『悪いけど、行くな、ともやるな、とも命令されてない。だからお前が俺の前に立ち塞がるんなら、俺はお前を退けなきゃいけない。
だから、退いて欲しい。』
「超聞けませんね。その願いだけは!!」
絹旗の攻撃から、会話は途切れた。
瑠雨は咄嗟に避けるがその攻撃を代わりに食らった床は綺麗なほどに穴を作り上げていた。
『・・・・・・・まじで』
たらり、と冷や汗が瑠雨から流れた。これを食らっていたらと考えれば誰だって冷や汗をかくものだ。
そこから電撃を応用しての劣勢から優勢に持っていったが絹旗が笑みを作った。
「超小賢しいですね貴方。
本当はこんなもの使いたくなかったんですが、しょうがねぇですよね。」
絹旗が音楽プレイヤーを出し、操作すると同時に絹旗は耳栓らしき物を耳に詰めた。
そして再生されると同時に体身体から力が抜け、演算の阻害が行われ瑠雨はその場に手をついた。
『っ!?』
「聞いたことねぇですか?
能力者の演算能力を大幅に阻害する装置を・・・、ちゃあんとあれから超能力者の能力も完全に封じ込めるほどに改善されているらしいですよ?第八位。
超気分はどうですか?」
『さい、あく・・・だ。このクソガキ』
「・・・。今引き下がれば見逃して上げなくもないです。
超答えを聞かせて欲しいのですが?第八位」
こんなところで、負けてたまるか。
そう思い瑠雨は手に足を込め、立ち上がった瞬間、思いっきり腹部を殴られる。それも・・・能力を行使している状態で。メキメキ、と言う嫌な音を立てたあと瑠雨は大量に吐血をし咳き込んだ。
『っ゛う゛・・・ぁ゛ッ!!う゛・・・ッ』
吐き気よりも痛みが瑠雨を襲う。
腹部を抑え、蹲る瑠雨を絹旗は静かに見下している。
「最終忠告です
超ここから立ち去ってください。
アイテムはスクールを敵に回すことを望んじゃいません」
『だからっつ゛、知るかって、、
アイテムだとか、スクールだとか。
俺は・・・桃都の荷電粒子砲として、ここにいんだよ』
そう、あいつらの、兄として。
あの人たちの弟として。
瑠雨は壁に手をつき体を支えながら絹旗を見た。
「超、分かってますよね。
次は”ない”こと。」
次喰らえば間違いなく死ぬ。
瑠雨は十分に理解している。
『喰らわなきゃいいんだr「行くのよ」!?』
不意にかけられた声。
大人びた、絹旗とは正反対といっても間違いのない女の声が瑠雨の鼓膜に響く。
『・・・・・・・・砥信------』
布束が瑠雨をまっすぐに見つめていた。
「貴方は、行かなきゃダメよ。
あの子を、守るんでしょう?」
あの子・・・とは、美琴のことなのだろう。瑠雨はその言葉に狼狽えた。
布束はそれを見て静かに微笑む。
『ちが、俺はあんたを助けに来た!!』
「見つけたんでしょう。護りたいと願える大切な存在を。戻りたいと願える場所を。
だったら、私なんかを守ってる場合じゃないわ。」
『あんたも俺にとっては護りたいその「お願いよ、行って」砥信・・・?』
「・・・・・・・私は大丈夫。
早く行きなさい。「お姉様」のとこへ」
静かに微笑まれたその笑顔は瑠雨を突き放すようで、瑠雨は、どうしたらいいかわからなくなっていた。
絹旗はそれをただ見つめているだけだった。
『でも、「また、」!!』
「どこかで会えるから。」
その言葉は瑠雨を動かすのに十分だった。瑠雨は2人に背を向けて走り出した。痛む体も、頭痛も気にせず。ただ走り出した。
「超、貴方は酷い人ですね」
「今更よ・・・あの子には、あぁするしかないもの」
残された2人の女は静かに言葉を交わしていた。