マガジン系夢への水鏡

□氷の舞手 02
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真知子はヘヴンの首筋に、自分の扇子を開いて押し当てようとした。
その様子に、誰もが驚いて、ヘヴンを守ろうとするが。
誰一人として、体を動かす事はできなかった。
「「「「「なっ!?」」」」」
彼らの体に、糸が巻きつけられていたのだ。
「糸巻き!?」
「カヅッちゃん!?」
「花月くん!?」
「…僕の、絃!?」
誰もが驚いて、花月を見るが、花月自身も驚いていた。
その直後、シュパパパ…と何かが空を切る音がして。
すぐに真知子を見るが、真知子は入り口を見て、手にメスを持っていた。
入り口を見て、誰もが納得していた。
「「「「「赤屍(ジャッカル)(さん)!!!」」」」」
「クス……本当に貴女は面白い人ですねぇ。
こんなに面白いものが見れるとは……。
今日此方にお寄りして、本当に良かったですよ…」
赤屍の言葉に、真知子は苦虫を噛み締める表情で、彼を見つめていた。
持っていた赤屍のメスを、真知子は赤屍に投げ付ける。
それと同時に扇子で彼に切りつけていた。
その様子を、彼らは愕然としてみている。
真知子の速さが凄まじいものだったから。
蛮や銀次ですら、中々目を追い付けられない程に。
しかし、赤屍と戦う真知子の姿は、華麗、と言う言葉が似合うほど、優雅に舞っていた。
再び赤屍の投げたメスを全て手で掴み取って、それを赤屍に投げ付けて。
同時に持っていた扇子で切りつけて。
ジャリ!!!!と真知子の扇子が赤屍の腕を切りつけて。
真知子はヘヴンを担ぎ上げて、その喫茶店を出て行った。

しかし、赤屍はそれを追おうともせずに。
蛮や銀次たちを繋いでいた絃を、切り裂いていた。
動けるようになった蛮たちは、慌てて真知子たちを追おうとしたが。
赤屍がメスで蛮たちの服を切り刻んだ。
「な、何しやがる!!」
「オヤ、こんな物を付けて、何処に行かれるんですか?」
蛮がそう赤屍に怒鳴りつけるが。
赤屍の言葉と、メスの先に有った物で、愕然としていた。
メスの先に刺さっていたもの、それは盗聴器だったから。
蛮は驚きの表情のまま、それを掴み取り、踏みつけて壊した。
「……追うぞ!!」
「だ、だけど…アノ真知子ちゃんって子…凄く速い…追いつけないかも…」
蛮の言葉に、銀次はオドオドしながら口を開く。
それは蛮が怖いからか、目の前の赤屍が怖いからか。
両方だろうが、それでもヘヴンを目の前で殺されかけて。
あまつさえ、連れ去られてしまったのだから。
追う事自体に異存は無いが、追い付けるかどうかが問題だったから。
「心配ありません、真知子さんの行き場所なら……多分あそこしか有り得ませんね」
赤屍の言葉に、誰もが彼を見る。
その直後、赤屍は持っていた紙袋を彼らに差し出していた。
「……私の服ですのでサイズは合わないと思いますが…着ますか?」
買って来たばかりであろう、新品のスーツ。
余り着たくは無い、そう思う彼らだが。
服は赤屍のメスによって切り裂かれてボロボロで。
そのまま向かう事もできずに、渋々それを着る。
サイズの方は、花月の絃によって何とか見れる形に直されたが。
黒いスーツの集団が、ヘヴンを救出すべく、その場を離れた。
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