マガジン系夢への水鏡

□氷の舞手 02
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「……ひもじいよぉ、蛮ちゃん〜〜〜〜〜」
ココ"HONKY TONK"で、二人の少年が生きた屍と化していた。
その片割れの金髪が、黒髪の片割れにそうぼやきながら。
終いには、本当に人類なのかと疑いを持てるほどに、たれていた。
「……うるせぇ、喋らすな…。体力使う…………」
そう言って、蛮と呼ばれた黒髪のウニ頭は更にだれる。
その時、カラー…ン、と言う音を立てて露出の激しいお姉さんが入ってきた。
「マスター、ガム抜き頂戴v」
「ヘヴン〜〜〜〜〜〜!!!仕事くれ、仕事しごとぉ〜〜〜〜〜!!!!!」
蛮はそう言って、お姉さんの胸を後ろから鷲掴みにして。
派手にお姉さんに殴られていた。
「煩いわね!!アンタラに頼めるような仕事は無いわよ!!仕事は彼に頼むの!」
その言葉の直後に、長い髪のお兄さんか、髪に鈴をつけたものが入ってきた。
「すみません、銀次さん…」
済まなそうな表情で、金髪の少年に口を開く。
その様子に、銀次と呼ばれた少年はピチピチとたれて。
たれパンダならぬ、たれ銀次と化して。
「カヅッちゃん!お仕事なんだぁ〜v」
「そうなんです。後もう一人居るらしいんですが……」
二人でナゴナゴと話をしていると。
再び扉は開かれた。
それをそこに居た誰もが振り返って見て。
ヘヴン以外のものは絶句していた。

そこから入ってきたのは、着物を着た少女。
黒曜石のような瞳と、同色の長い髪を持つ、肌の白い少女だったから。
しかし着用していた着物は黒。喪服だった。
「うっわぁ…スッゴイ綺麗な子ォ……」
夏実が呟き、蛮・銀次・花月もそれに同意して頷く。
「待っていたわ、真知子ちゃん。…お父さんの事は…ご愁傷様です……」
「…参列して頂きまして、有り難うございました、ヘヴンさん」
ヘヴンの言葉に、真知子は苦笑しながら口を開く。
その少女の可憐さと、現在の会話で、彼らは何も言えずに呆然と二人を見る。
その様子をヘヴンが気付いて、振り返りながら口を開いた。
「名前位は知っているかもしれないけど……『氷の舞い手』の西田真知子ちゃんよ」
ヘヴンの言葉に、蛮が呆然と少女を見詰めた。
「『氷の舞い手』!?『暗殺屋』から『よろず屋』に転向した『無敗の神話』と云われる!?」
「で、ですが『氷の舞い手』は確か40代半ばの男性、と言う話でしたが…!!」
蛮に続いて、花月も驚きの表情で口を開いていた。
その二人の言葉に答えるように、ヘヴンが口を開く。
「そうだった、のよ。お父さんが亡くなられたと同時に、その名を真知子ちゃんが受け継いだの。真知子ちゃん、コイツは『ゲット・バッカーズ』美堂蛮、それから金髪の子が同じく『ゲット・バッカーズ』天野銀次、それでこの綺麗な子が今度の貴女のパートナーで、『絃の花月』こと風鳥院花月よ。それじゃあ仕事の話を始めましょうかv」
ヘヴンの言葉に、真知子と花月は彼女と同じボックス席に座って。
ヘヴンが依頼内容を口にした。
「……僕はそれで構いません」
「…私の方は今、別の依頼を受けてるんですが、その後でも宜しいですか?」
花月の、承諾の言葉の後に、真知子はゆっくりと口を開く。
それにヘヴンは真知子を見た。
「え?期間はどれ位掛かるのかしら?」
「すぐ終わりますv……これで、ね」
真知子がそう言うが速いか、不意に鈴の音が鳴った。
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