story*
□隣のねこさん
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―二人の男と一匹―
「今日からここが俺の家か〜」
ひと通り運び終わった荷物があるせいか、初めて見に来た時より幾分か狭く感じるこの部屋に、ヨンジュニョンという男は「これからよろしくお願いします」と一礼して、額に垂れる汗を首にかけていたタオルで拭った。
―初めての一人暮らし。
不安ではあるが、根拠のない楽しみが心を弾ませる。
これから何が待ってるのだろう。
聞く相手もなく、自問自答を繰り返すうちに、気づけば片付けが終わっていた。
一人暮らし記念に新しく買った掛時計は午後5時を示している。
―そういえば隣の人に挨拶してなかった...。社会人として礼儀としてここは挨拶するべきだよな。しまった、なにも渡すモノを持ち合わせていない。
仕方ない、挨拶はまた明日にするか。
大家さんが言うにはこのアパートには、俺と同じくらいの年代の大学生ばかりらしい。1日遅れただけで何も言わないだろう。
ジュニョンは1人結論づけると新品のベッドに勢いよく飛び込んだ。
真夏の太陽の下、何度も荷物を運びまわった疲れが波のように押し寄せてきて、それに飲まれるかのように自然に眠気がジュニョンを襲った。
ピンポーン
「....っはぁい」
―しまった、寝てしまっていたようだ....
太陽はすっかり落ちていて、窓からは月の光が僅かに入っていた。
真っ暗な部屋を這うように歩きながら玄関にたどり着く。
ぎいっと開くドアの隙間から電灯の光が目を刺して、そこには小柄な男の人がたっていた。
「ど、どうも!今日引っ越してきたヨンと言います!」
ジュニョンは相手が、ここの住民だと気づき慌てて挨拶をするが、向こうはそんな行動を見て苦笑い。
「はは、宜しくお願いします。私は下の階に住んでます。ヤンヨソプです。」
―見た感じ、俺より年下そうだし、雰囲気もこどもっぽいのに、対応が大人。下の階なのにわざわざ来てくださったんだな。
「よ、よろしくおねがいします…」
―一人暮らしをすることになって、一人前の大人になったつもりが、これじゃあまだまだ子供だなと渋々思う。
「あ、あの。」
何故か顔を赤くしてヨソプさんが口を開いた
「なんですか?」
「ご飯....一緒に食べませんか?」
―はにかんだヨソプさんの目がギラっと光ったのに
俺はその時気づかなかった。