story*

□ラストストーリー
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チャンヒョンスンはヨンジュニョンにとって出逢ってはならない運命の人だった。

二人が出逢ってしまったのは高校2年生の2学期、始業式の日だった。式が終わり、教室へと戻ってきたジュニョンが、今日はもうこれで終わりだよな?なんて期待しながら帰る支度を始めた時だった。
なにやらクラスがざわついてることに気がつき、人だかりの方に目をやると、ミルクティーのような淡い茶色の頭が見えてそこから徐々に白い横顔が現れた。それが初めて見たヒョンスンだった。
「はーい、みんな座りなさい」
担任が声をあげると、ヒョンスンが教卓に立った。
その髪色や中性的なルックスにクラスの視線は釘付けになり、周りは期待を膨らませた。
「みんな気がついてると思うけど、今日からこのクラスの一員になるチャン君です」
「初めまして、チャンヒョンスンです。みんな、これからよろしく」
クラスの全員が拍手した。ただ一人、つまらなさそうにヒョンスンを睨むジュニョンを除いて。
席に戻る途中、二人は自然と目を合わせてしまった。ジュニョンはそれはそれで恥ずかしかったのか驚いた顔をして、その反応が面白くてヒョンスンは笑ってしまった。馬鹿にされたと勘違いし恥ずかしくなって、目を逸らした。
その時からジュニョンにとってヒョンスンは、胸の奥を熱くする不思議な危険人物になった。


◇◆◇◆◇


初めて二人が会話したのは、始業式の日の夕方。ジュニョンは学校が終わり誰もいない公園のベンチで横になった。あたりは雨が降っていて、少しでも見えなくなるようにとキャップを顔に乗せた。ジュニョンは雨が嫌いだった。その理由は後々知ることになる。
そんなジュニョンがもうすぐ寝れるという時に、急な風が吹き、顔に乗せていたキャップが飛んでいってしまった。
「あ…」
飛んだキャップを拾ったのは、ヒョンスンだった。パタパタと駆け足で近づきキャップを渡した。
「あ、ありがと」
ぶっきら棒にお礼をするジュニョンをヒョンスンは嬉しそうに眺め、それから何故か隣に座った。ジュニョンは一瞬触れた肩の冷たさに警戒して距離をとった。
「僕はチャンヒョンスンっていいます。今日から一緒の学校に通うことになりました、よろしくおねがいします」
「あぁ…ってそれもう聞いたけど」
「え!?なんで?」
「なんでって…」
「あぁ!もしかして同じクラスの人!?」
ジュニョンは少し傷ついた。ついさっき、目を合わせて笑ってきたくせにどれほどまでに俺を馬鹿にすれば気が済むのかと叫びそうになるのを抑え、言い放った。
「ごめん用事思い出した、帰るわ」
「ほんと!じゃあまた明日ね!!」
あからさまな嘘をヒョンスンは気づくことも疑うこともせずに去っていく背中に手を振って微笑んだ。
また明日、と言う言葉に若干の嬉しさを隠しながらジュニョンが相槌変わりに傘を回した。
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