ココロ
□12. 住む世界が違いすぎます
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イルミと部屋に戻ってきてしばらくすると。
けくっ、けくっ、と横隔膜が痙攣をはじめた。
息を吸うタイミングでしゃっくりをするとうるさいから…
「ヒカルどうしたの?しゃっくり?あ、もしかしてさっき妖精と話してたのってそれ?」
「そうでけくっ、す」
鋲が飛んできた。
驚かそうにも命懸けでしゃっくり止めるのはやだなあ。
「わっ!けくっ」
「敬語になってたし、しゃっくり止まらないね。それ本当にそれ2時間たたなきゃダメなのか…」
敬語……すっかり忘れてた…というか無意識で敬語になっていたみたいだ。
1度定着してしまうとなかなか剥がれないものだ。これはどうにかしないと私の死期がすぐそこになってしまう。
いや、そんなことより、だ。なんでイルミは2時間の事を知っているのだろう。
「まってけくっ、聞いてたの?」
「聞いてたんじゃなくて、聞こえてたんだよ。で、原因はなんなの?」
原因を話してしまえば私は毒がダメだったということがバレる。しかし嘘を付いたところで何かあるわけでもない。
「毒…けくっ」
「しゃっくりが出る毒って聞いたことないんだけど」
言葉が足りてませんでしたごめんなさい。
「そうけくっ、じゃなくて妖精からもらった薬のけくっ副作用」
「そういうことか、結局毒ダメだったのか」
「違うよ!このしゃっくりは妖精が悪いけくっ、んだよ?あいつ副作用ないのあるってけくっ、飲んでからおしえたんだから‼」
「毒に耐性がないからその薬飲んだんでしょ?まずいいからシャワー浴びておいで」
くっ。その通りにござますよ。
いや、それより薬の事まで掘り下げられなくて良かった。
「うん…けくっ」
シャワーを浴びて、髪を乾かし終えた頃にはしゃっくりは止まっていた。
「あれ。ヒカルしゃっくり止まったんだ」
「うん、止まったよ?」
しゃっくりって意外と辛いものだなんて忘れてたよ。
短い間ならなんとも思わないけれど、長いといつ止まるんだろうってことばかり考えるもんなあ…
「じゃあ、もう夜遅いし寝ようか」
「うん、寝る」
さっきいた部屋の隅、私のセーフティーポイントの方に向かうと「何処行くの?」と声をかけられた。
「さっきいた場所で寝ようかと…」
「こっちで寝なよ」
そう言って手招きされる。
そんな、人様のセーフティーポイントに入るのはちょっと…
「スペースが狭くなっちゃうよ!部屋の角でも眠れるよ?」
そんなことない、来なきゃ刺すと言われ、おずおずとベッドに入る。
あっ、ふかふかだ。
お布団は魔法の道具だ。すぐに眠くなる。
ふかふか具合に心地よくなり、すぐに眠りについてしまった。
そんな様子をみてはぁ、とため息をつく人が1人。
ヒカルはベッドのスペースは気にするのに同じベッドだってことは気にしないのか。
ヒカルの方を見るとすぅすぅと寝息をたてている。
暗殺一家の家なのに無防備…これじゃあいつ殺されても文句は言えないよ。
そんなことを思いながら、イルミは瞳を閉じた。