ココロ
□最終話. タイミングって大事
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「ん…?」
ゆっくりと目を開くと景色が少しぼやけて見えた。
「起きましたか」
始めは誰かわからなかったが少しするとピントがあい、眼鏡が見えた。
「眼鏡?まさか…ぎ、ギル…さん…はい、あの」
「何度言えばわかるのです?」
「はい…」
必死に取り繕おうとするが、ギルがそれを許してくれない。
「いや、わかってた!わかってたんですけど」
「私はあなたのために言っているんです。わかってますか?え?」
「すみません」
もう何も言わせてくれないので謝るしかないが、私には1つだけ言いたいことがある。
「いや、あの、でも疲れがですね、なくて」
「この世界に来てすぐは馴染んでいなかったので疲れを感じるようでしたが、今はただ眠たくなるだけと言ったはずですが?」
「眠気が突然!」
「もう少し修行などが必要なのでは?」
「ゔっ、いや、でもそこまで重症じゃ」
「あなたどれくらい眠っていたかわかります?2日間ですよ?」
「嘘でしょ!じゃあ講習会とかも…」
「終わりました」
言い訳はさせてくれなかった。前々からずっと言われてた事だから仕方ないといえば仕方ない。
だって私が悪いのだから。
でも、でも気を抜いたら私がやられてた。
トーナメント表が開示される前は配分のことだってちゃんと考えていた。
…ギルはわかってくれていなかったのだろうか。
そしてギルの手はゆっくりと上がっていく。
殴られると思って固く目を瞑る。
言いつけを守れなかったのだから打たれたって仕方ない。
「ご、ごめっ…んなさっ」
ぽふっ…
打たれると思っていたのに、私に与えられたのは優しいぬくもりだった。
「全く、心配したんですよ?私がこの姿で出てこれるようになったのも半日前くらいだったんですから。無事でよかったです」
「でも、あれから2日経っているならもう…」
ギルの優しさに少し泣きそうになりながら、ふと思いついた心配を口にすると、「それなら心配ないです。ちゃんと言えますよ?」と言われ、嬉しくなる。
もうこうなったら恥ずかしさなんて関係ない。
「本当?」
「ええ、本当です。ヒカルさんが心配だったようで目覚めるまで残っていると皆さんがおっしゃったらしいのです」
「じゃあちゃんと…イルミに好きって言えるんだね」
決心はきちんと固まっていた。