中編

□第3話 身の回りのこと
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夕飯を済ませ、アズが眠りについた頃、イルミは3人をリビングに集めた。その理由はもちろん、アズについてのことだ。


「アズがね、仕事場で嫌がらせにあっているみたいなんだ」


今日のことを3人に話すと、皆揃って眉間に皺を刻む。


「ただアズを妬んでるだけじゃないか。主犯がわかっているならそいつをどうにかすればいいんじゃないか?」

「そうだね♦でもこの世界のルールじゃ殺しちゃいけないんだろう?まぁボク達のところでもそうなんだけどさ♠」


面倒くさそうにそう言うが、主犯を殺してしまって困るのはアズだ。
もしも殺してしまったとしたら、嫌がらせを受けていたアズが真っ先に疑いをかけられ、最悪職を失わせてしまうかもしれない。
それはとても困る事態だ。


「でもワタシ達が帰た後のことも考えた方がいいね。アズが1人になた時、アズを助けてくれる人はいないよ」


一緒に住んでいて、アズが自分達以外に交流を取っているところを見たことがなかった。
ケータイも殆ど鳴らず、鳴ったとしても仕事の用事だけだ。
そんな状況でアズを守ってくれる人などいるとは思えない。
今この世界にいるうちに問題を解決しないと、残されたアズが独りぼっちで苦しむことになるのだ。それだけは避けたい。


「アズの身の回りのことを少しだけ調べてもいいと思うんだけどみんなはどう思う?」


身の回りの環境やそれに関わる人を調べることで少しは解決策が生まれるかもしれない。そんな考えからの提案は採用され、明日からクロロとフェイタンは帰る方法を探すついでに、イルミとヒソカはアズの身の回りのことを中心に調べることになった。


「今までボク達は殆ど何も出来てなかったから仕事が出来てよかったよ♥」

「この世界の言語はだいたい理解出来たしな。文書などもよっぽど難しい漢字がなければ読めるようになったから情報も集めやすくなったのは大きいだろう」


1週間で平仮名、片仮名、常用漢字を覚え、アズに驚かれたことは記憶に新しい。
1ヶ月という時が経った今、4人とも空いた時間に練習したことで、日本をマスターすることが出来ていた。

情報集めは問題ない。この問題を早く解決してあげるのが今の4人に出来ることだ。

1人残してしまうアズがひとりで苦しむことがないように、一刻も早く解決してあげたいという気持ちが4人を動かしていた。
本当は自分達の世界に連れていきたい。そうすれば嫌がらせを受けることもなく、もう働かなくてもいい自由な空間を用意してあげられる。でもそんなことを言ってもアズを困らせてしまうだけだろう。
少なからず仕事のことを気にするはずだ。
それに4人の住む世界は血にまみれているのだ。こんな平和な世界から死という存在を身近に感じる世界に行きたがるとは思えない。
自分たちの世界につれて行かないのがベストな選択だというのは、いうまでもなかった。


「手がかりが全然見つからなくて気が滅入って来ていたが、もうひとつの目的ができたから少しはモチベーションもあがるだろう」


クロロは口角を上げるとソファーから立ち上がり、リビングを後にした。
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