非日常のとビら

□24日目 ウィンドウショッピング
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暫くイルミの後ろをついていくと、急に少し開けた場所にでた。
その場所にはイルミの私用船があった。


「イルミの飛行船なんかめちゃくちゃでかくない?」


ハンター試験から帰る時にも乗ったけれどあの時は精神的に疲れすぎて半分意識がなかった上に目の前で人の骨が折れる所を見せられ、ご丁寧に音まで聞かされたから何もかもが疲れていたのだ。
そんな状況で飛行船なんかに構ってられない。
しかしハンター試験の時に乗った飛行船も大きかったけどこちらも負けてない気がする。


「ココナ一応これで3回は乗ってるんだけどね」

「意識がないならノーカンだよ。しかもそれ普通に私のこと誘拐した時のやつじゃん!」


べしっとイルミの腕を叩くと飛行船の中から人が出てきてめちゃくちゃビビる。
そして当然のようにイルミの後ろに隠れた。


「ココナってびっくりするくらい現金なヤツだよね。ウケる。あれうちの執事だから大丈夫だよ」

「そうなの?こんにちは、初めまして」とぺこりとお辞儀をしてから、「執事さんがいるならはじめから説明してよ、めちゃくちゃびっくりした…心臓どきどきしてるもん…」と小声で小言を漏らす。


少し厳つい表情でメガネをかけたオールバックの執事さんはぺこりと会釈をしてくれた。
この前は確かイルミが操縦していたはずだったけど今日は執事さんがやるみたいだ。

ドキドキするの?それたぶん恋だと思う。とかほざいてるイルミは無視だ無視。
しかししっかりイルミの後ろにはくっついてちゃっかり手まで握ってる。
暗殺一家のところの執事さんも怖いに決まってる。


「すごい警戒してるみたいだけど初対面じゃないんだよ?ハンター試験の時にも会ってるよ」

「だからそれは私の意識がない時でしょ」


ふと思ったがイルミが私の家でぐだぐだしている間ここでずっと待っていたのだろうか。
執事さんがいるということ は私をこの世界へ連れ出そうとしていたということだ。
もしもし私がめんどくさがっていたら彼はずっと飛行船の中で待っていたのだろうか。

そう考えると執事も大変そうだ。
それに暗殺一家の執事だなんて就職することからもう大変そうだ。

そんな大変な思いをして執事になったのにこんな所で待たされるだなんてめちゃくちゃ可哀想じゃないか。

いや、待ってるだけで給料でるのラッキータイプかもしれない。


「ちょっとココナ。ぼーっとしてないで行くよ」


ぐいぐいと手を引っ張られて意識がこちらに戻ってきた。
またどうでもいいことに頭を使っていみたいだ。
大人しく飛行船に乗ると思っていたよりもずっと広くてびっくりする。
前よりは周りを見る余裕があるみたいだ。


「ねぇねぇ、こんなおっきい飛行船だったらお仕事の時とか邪魔にならない?」

「仕事の時はまた別の移動手段があるし小さいのもあるからこれは使わないよ。そもそもこれ使うようになったのはココナのところに遊びに行くようになってからだし」

「ふーん。確かになんとなくイルミが1人で外に出て遊んでるイメージとか無いかも。そんなんじゃ使わないよね」


イルミに一緒に遊びに行くような友人の類がいるようにも思えない。
ヒソカとかクロロとかと一緒に遊んでたら不信感を抱く私がいる。

私といる時はみんな私と遊んでくれるけど、個々で何かしているイメージはない。

そう考えるとなんだか不思議な関係だ。


ふわふわと空を眺めてイルミと会話しているうちにだんだん高度が低くなっていき、やがて地上についた。

到着致しました。と丁寧に教えてくれた執事さんにお礼を言うとイルミさんに腕を引っ張られてそのままついて行く。
迷子は怖いからもちろんばっちり手を繋いでいる。
この世界のことが全くわからないのにはぐれたらこの年で普通にめそめそ泣くだろう。絶対に。


「遊園地とか動物園とか水族館って定番すぎるしココナはこっちの方が好きでしょ?」


イルミが連れてきてくれたのは何の変哲もないもない街だ。
何の変哲もないと言っても私の世界とは違って素敵なレンガ造りのお家や、石造りの建物など異国情緒溢れるめちゃくちゃ素敵な街だ。
街の人々が行き交う中を歩いてるだけでめちゃくちゃ楽しい。

履いてきた少しヒールの高い靴が石畳の地面とぶつかりあってコツコツといい音をたてる。

ただのショーウィンドウでもこの世界のトレンドであろうお洋服の周りにデザインとして散りばめられているハンター文字を見ると私は絵本の世界に来たんじゃないかと錯覚してしまう。


「なんかイルミ達が私の世界が楽しいって言ってる理由わかったかもしれない」

「自分にとっては日常の風景なんだけどね。誰かにとってはそれは普通の出来事じゃなくて非日常になり得るって面白いよね」


他愛のない会話をしながら行き当たりばったりでお菓子やさんに行ってみたり、お洋服を買ってもらったりでめちゃくちゃこの場所を満喫しまくった。
イルミが荷物を持たせるために執事さんを呼ぶと電話をし始めたので待っていると、「そこのお姉さん」と女の人に声をかけられた。
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