非日常のとビら

□34日目 貴方の真意がわからない
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ハンター文字を覚えたのはいいが、やっぱりネイティブの速度にはまだついていけなくて、ニュースの画面に映る文字列は私にとってもはやデザインと化していた。
しかし言語は私の知っているものと同じ。
それだけは救いだった。

最近大きな事件があったらしく、たくさんの報道陣が集まっているところがテレビで流されていた。

ぽちぽちとチャンネルを変えていると、ハンターについての番組があったり、子供向け番組もあったりしたが、今はどこも幻影旅団が死んだ、だとかオークション会場のものが全て盗まれた、とかそういう報道で持ち切りだった。

幻影旅団は確かクロロたちのことだ。
どうやらネット上で幻影旅団の団員がバラバラにされている映像が流れているらしい。

さっきまでクロロがここにいたけど、どういうこと?
いやでもテレビは数日前にあげられたと言っている。
私は昨日パクノダさんにも会ったし、クラピカさんは旅団の誰かと電話で話していた。

ということはクロロたちは自分たちそっくりの死体を作り上げたってこと?

目の前のモニターから流される情報に首を傾げていると、玄関の扉が開く音が聞こえた。


「あれ、クロロどこ行ってたの?」

「もう風呂が済んでいたのか。1人にしてすまんな」


「もう少しかかると思っていたから…」と、言いながら手に持っていた袋達を私に投げつけてくる。

なんだなんだとキャッチして中身を見てみるとどうやらこの袋たちは服やリュックに生活用品のようだ。


「さすがに何も無いのは不安だろう。これを使え」

「ありがとう!何も持ち物がないのは確かに不安だったから助かるよ」


紙袋の口に貼ってあるセロハンテープを丁寧に剥がしながらお礼を言う。
こういうテープを綺麗に剥がしたくなっちゃうこの心理はなんなんだろう。

綺麗に剥がしたテープを綺麗にまとめていると、つけっぱなしにしていたテレビからまた幻影旅団というワードが聞こえてきてそちらに顔を向ける。
するとクロロは私が聞きたかったことをを全て察してくれたみたいで可笑しそうにあはは、と声を出して笑った。


「精巧だろう。見せしめとしてバラバラにしている動画が流出しているらしいがとんだお遊戯だな」

「今のクロロを見ると確かに悪役だなって思うわ」


こんなに世間を賑わすくらい大掛かりなことをしておいて普通に笑い飛ばす精神はどうかしてると思う。
よく言えば器が大きい。こんな笑い方する人は100%悪役だけど。


「確かに解体ショーされても偽物だってわからないのはすごいと思う。だって肉の質感とかまで全部再現してあるってことでしょ?」


テレビに映る映像はモザイクがかかっていて分からないけれど、こんなにしっかりとモザイクをかけてしまうほどにグロくてリアルなのだろう。

きっとそこまで再現できるのも例の能力なのだろうけれど、ねんのうりょく≠ヘ本当になんでもできるらしい。

不思議なことはなんとなく解決したから次に行こう。
ねんのうりょくのことは私にはわからない。


「わぁ、めっちゃ可愛い!」


これからのことを考えた動きやすいけど私の好みにぴったりな服が数着入っている。
これだけあれば生活するのに困らないだろう。
他にも大きめのリュックや化粧品、充電器などの私が絶対に必要とするものが入っていて完璧だった。


「他にも欲しいものがあれば遠慮なく言え。できるだけ叶えてやる」

「クロロがめっちゃかっこよく見えるよ…すき…」


貰ったリュックに貰った服を全部つめてもまだ余裕があって、このリュックも私の相当のお気に入りになりそうだ。

にこにこしながら化粧品たちを確認していると、背後から暖かい風が吹いてきた。


「ずっと気になっていたんだが、なんでお前は髪を乾かさないんだ?」


どうやらクロロがわざわざ私の髪を乾かすためにドライヤーを持ってきてくれていたらしい。


「自然乾燥でも乾くし、あと面倒くさいじゃん?あと自分の家にいた時はゲーム優先だから日課と化してしまってドライヤーという概念がなくなったのはある」


キラキラとした可愛いパッケージのものをポーチにしまいながら、ドライヤーの風を浴びる。


「これくらい面倒がるなよ。ココナがやらないならオレがやってやるのもいいかもな」

「そんなことしたら私全部クロロにやってもらうことになっちゃうよ?そうなったらクロロ好みにカスタムされちゃう!」

「お前をオレ好みにしたとしても、オレの物にはなってくれないんだろ」

「あはは、なに真面目な顔してそんなこと聞いてるの。さすがに私そこまで駄々草じゃないよ」


現在進行形で髪を乾かしてもらっている女が何を言うと言われたらそれでおしまいだけど、変なことを真顔で聞いてくるクロロだってどこかおかしいからセーフセーフ。

貰ったものを全部仕舞い終わったため、クロロからドライヤーを受け取ろうと振り返ると、私をじっと見つめるクロロと目が合う。


「クロロ?どうしたの大丈夫?」

「ココナはどこまでもココナだな」


眉尻を下げてぽそりと言うと、乾かし終わったからもう寝てろ、と言ってクロロは脱衣場に消えていった。

今のはどういう意味なのだろう。
少しどきりとしてしまった自分が悔しい。

もやもやとした気持ちを抱えながら私は毛布を被った。



ーーーーー


精神的にも、肉体的にも疲れているはずなのに、バカクロロのよくわからない発言のせいでなんだか眠れないままでいると、クロロが部屋に戻ってきた。

なんとなく起きにくくて寝たフリをしていると、私のベッドのスプリングが軋む。
クロロがベッドサイドに座ったらしい。
さらに起きにくくなってしまった私は眠ることに集中する。

何故かクロロは全く私のベッドから離れない。
何をしているのかはわからないが、見られていることはなんとなくわかる。
しばらくの時間がだった後、優しく髪に触れられた。


「…オレもココナのことが好きなんだ。だれにも渡したくない。誰の目にも触れさせたくない」


ゆっくりとした手つきで私の頭を撫でながらぽそりとクロロがそんな言葉を紡ぐ。


「でもココナを無理やり盗んだところでそんなことには意味がないんだ。オレを好きになれ、ココナ」


ちゅ、と額に柔らかい感覚がしたかと思うとクロロは私のベッドサイドから離れていく。

キャパオーバーしてしまった私の頭は何が何だかわからなかったけれど、さらに眠れなくなってしまったことは確かだった。
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