中編
□最終話 帰る場所
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そしてその後は2人で近くの公園に向かいながら雑談をする。
その公園は四季の移ろいを感じることができるところで、小さい頃からお気に入りの場所だ。
春は桜、夏は万緑、秋は紅葉、冬はうっすらと雪が積もり、太陽光が反射してキラキラとした景色が見れるとてもいい場所で、よく会社帰りに寄ったりもしている。
さくさくと軽快な音を立てながらクロロの方を見る。
「天気がいいと心地いいな」
「ピクニック日和だね」
今度私のお休みの日にこんなに天気のいい日があったらみんなでピクニックをしたいなぁ…なんて考えていると足がもつれて自分の足に引っかかり、バランスを崩す。
「わっ!」
「おい、大丈夫か?」
パシッと手首を捕まれ地面とキスするのを回避する。
「あー、びっくりした。ナイスキャッチ?」
「よく何も無いところでコケそうになれるな…疲れてるんじゃないか?」
少しふらつく私を気遣ってかそっと腰に手を添えて心配してくれる。
「ちょっと考え事をしていただけだから心配しないで!」
「それよりね!」とキョロキョロと辺りを見回す。
「あれ?」
だいたいここにはあの子がいるのだが、今日はいないのだろうか。
「何を探してるんだ?」
「ここにね、リスがいるんだ。人間が餌をくれるってわかってるのか、私がたまに餌をあげてるから寄ってくるのかはわからないんだけどね」
餌をあげるまでひょこひょこ付いてきたり、食べ終わっても傍にいてくれるとてもかわいい私の友達だ。
都合の良い人間と思われているだけなのだろうが。
「おかしいなぁ…」
!
緑の中に不自然な茶色いふわふわが見えた。
「えっ、あっ」
見に行こうとする私をクロロが止めた。
「待て、見るな」
私を傷つけないための行動だろう。でも、でも。
「あの子でもあの子じゃなくても彼処に放って置くことなんてできないよ。せめて土の中に埋めてあげたい」
クロロは渋々と言った様子で承諾してくれたので、1度家に帰り軍手とスコップを持って公園に戻る。
他の動物に掘り起こされないよう深く穴を掘り、病気が怖いので軍手をしてそっとリスを持ち上げると、ぽろりと何かが落ちてきた。
「ちょこれーと」
よく見ればリスの口の周りにはチョコがついている。
これを食べてしまったのか…
「動物が食べちゃダメって知らないであげちゃったのかもね」
親切心であげただけなのかもしれない。
誰も意図的に動物を殺そうとなんてしないだろう。
そっとリスを穴の中に入れて土を被せていく。
私の友達がまた居なくなってしまった。
次からこの場所に来てもあの子が迎えてくれることはなくなってしまったのは寂しい。
仕事に向かう時に使っている鞄の中に入っているリスの餌も必要がなくなってしまった。
「オレが散歩なんかに誘ったから嫌な物を見せてしまったな」
「いいの!これは事故みたいなものでしょ?それにちゃんと埋めてあげられてよかったって思ってるからクロロに感謝してるよ」
そのまま放置していたらカラスなどに食べられていたかもしれない。
それならやっぱりこれで良かったのだ。
「よし!任務完了だね。そろそろお昼ご飯の時間だし帰ろっか」
「ああ、そうだな」
お昼ご飯を食べたら絵でも描こう。
私の友達でいてくれた、あの子の絵を。