中編
□プロローグ
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「言っている意味がわからないんだけど」
「そのままの意味です。両親の財産は全て私の物になるけれど私はこの管を抜かれた時点であと7日で死ぬんです。それなら財産を全て貴方への報酬とするのでその代わりに1週間を私に買い取らせてください」
自分でも訳の分からないことをしていることはわかっていた。
でもずっとベッドの上にいた私には頼める人間は目の前の殺し屋さんしかいなかった。
リハビリをしていたからベッドの上にずっといたからといって歩けない訳ではない。
長時間は車椅子でないと無理だけれど自分の身の回りのことはきちんとこなせる。それに、7日も生きていられるかわからない状況だということと、ただ今までずっと病室にいたから外の世界を見せて欲しい。それだけだということを彼に伝える。
「簡単に言えば死ぬまでの1週間を有意義に過ごしたいからオレに手伝って欲しいってわけね」
「まぁそんな感じですね。政治家と大女優の娘なので私は良く知らないですがきっと報酬は悪くないと思いますよ。家のものも全て持って行ってもらって構いません」
テレビ取材の時用に私の部屋はしっかりと作られているため、1週間住む場所も特に困らないだろう。
私は外を出歩いたことがないから、彼が居なくてはどこにも行けないのだ。
「ふーん。面白いからやってあげてもいいよ」
「やった!そうと決まればこんな病室からは早くでましょう!私にはもう時間が無いのですから!」
少しだけよろけながら車椅子のところまでいき、それに座る。
毎日乗る訳でもないのにしっかりとメンテナンスされた車椅子は少しの力を入れるだけですんなりと動いた。
「部屋の外は人がいるからやめた方がいいよ」
「それじゃあどうやって行くんですか?」
すると彼は窓。と答え、片手でひょいと私を担ぎ、片手で車椅子を畳んで持つと、ぴょんと窓から飛び降りた。