非日常のとビら
□1日目 私のプライバシー
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部屋でアイスを食べながらだらけていると、ガチャりと例の扉が開いた。
靴は…脱いでるようだ。よし、ひとまずは合格かな。
いちいち声なんかかけてられないのでアイスを食べながら視線だけそちらにやると、クロロと目が合った。
「暇そうだな」
「学生なんてとってもお気楽だもの。テストが無ければ毎日暇だよ」
学校から帰ってきたら動画をみたり、ゲームをしたり、アニメをみたり、お絵かきしたり…とやることなどテンプレ化している。
毎日退屈なのだ。だからといってここまでは望んでいなかったが。
「そういうクロロは何しに来たの?まだ太陽が落ちきってない時間だけど」
「この世界の人間の行動観察をしようと思ったんだが、お前を見てると対してこちらの世界とは変わりなさそうだ」
そう言って私の部屋を物色する。
一応女の子のお部屋なんですけど。そんなにじろじろ見られると恥ずかしいんだけど。
いや、今更なんだけどね。
「ねえ、私のプライバシー全然保護されてなくない?」
「心配するな。大丈夫だ」
「全然大丈夫じゃないでしょ。だってこの扉私の部屋にあるんだよ?こっちの世界に来るためには1回私の部屋を経由するんだよ?」
「そうだな。今度来る時からはノックしてから来よう。返答がなかったら部屋にいないとみなしてそのまま入るぞ」
何も解決できてない解決策を出すこの男の無責任さにイラッとするが、侮ってはいけない。
こいつはなんかよくわからない犯罪者なのだ。しかも団長とか言っていたからきっとヤバイに違いない。
ここは許容だ。優しい心を持て!わたし!
この忌々しい扉があるのは私のベッドの向かい側の壁。本棚の隣のデッドスペースとなっていたところだ。
邪魔なわけではないが、こっちに来た人が部屋全体を見ることができる位置だから私がどうも落ち着かない。
昨日クロロ達が帰った後、好奇心で扉の方を見に行ってみたら、壁と扉との間にスペースがあった。
動かしてみようとも思ったのだが、下手に動かして殺されたら怖いのでやめた。
これは持ち主にやってもらうべきことだ。
「ねえ、やっぱりこの扉動かしちゃダメなの?空き部屋ならあるからそっちの方に置いてくれた方が大変たすか」
「それはできないな。ほら、見てみろ」
すっと隙間に指を差し込みぐっと力を入れている様子だが、扉はびくともしない。
「納得できないならお前もやってみるといい」
そう言われ、納得できていないわけではないが、とりあえずやってみると、本当にびくともしなかった。
「木製の扉だからそこまで重そうじゃないのに…」
でもそんなことを疑問に思っていたら限りがない。目の前にいるこいつの存在自体がありえないんだから。