非日常のとビら
□3日目 勉強
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「あ〜もうやりたくない。むり〜」
「それ初めてからまだ5分も経ってないよ♦」
机の上にシャーペンを投げ出して拒絶するように椅子に背を預ける。
「こんなん無理だよ。何だよ数学って。こんなのわからなくても生きていけるし」
「でも考査でつかうんだろ♦それならちゃんとヤらなきゃ❤」
教科書を見ても、答えを見てもよく理解できないのだ。
教科書に書いてある公式はちゃんと暗記しているけれど、どれにどの公式を使えばいいかはわからない。
過去問に付属された答えには、今解いている問題の解き方が書かれている。しかし所々が端折られているので数学ができないバカには理解するのが難しいのだ。
そもそも今回のテストは数学がメインではなく、統計を見て、それが何を表しているのかがメインなのに、私はその前段階で詰んでいる。
「暗記教科みたいに覚えるだけで出来ればいいのに…」
そう言いながらスマホに手を伸ばすと、横から手が伸びてきて私の手は空を掻いた。
「ちゃんとお勉強するまでコレは禁止♠ココナはこれを弄り始めたら何時間もやってるでしょ♣」
「わからないところをスマホで調べようとしただけだし!」
ヒソカの言う事に否定はできないが、認めるのもなんだか腹立たしい。
「しょうがないなあ…♠」とヒソカが呟くので、返してくれるのかなと淡い期待を寄せると…
「じゃあボクが勉強教えてアゲルよ♦」
「えっ」
ヒソカって勉強できるの?というとても失礼な考えが頭に浮かぶ。
クロロとかなら勉強すごく出来そうだし、イルミもなんとなくそんな感じがする。けれど、今の私にはヒソカにそんなイメージはなかった。
「ボクだって学くらいはあるよ。少なくともココナに教えられるくらいのね♣」
そう薄っぺらい笑みを浮かべて私に言う。
別に貶したとかそういう訳じゃないのに…
「で、何処がわからないんだい?」と私に尋ねてくるが、残念ながらわからなすぎて何処が分からないのかすらわからないのだ。
「わからないところをその場で潰さないからそういうことになるんじゃないか…♦」
「わかってるよ…これは私が悪かったって思ってる…」
テストは明日だ。テスト範囲の問題をひとつひとつ解いている暇はない。
「なんでわからないのに直前にやろうとするんだい?」
そういうヒソカからは僅からながら圧を感じる。
やる気が出なかった、なんて言い訳はもう言い訳にすらならないだろう。
「悠長にしている暇がないからどんどんやっていくよ」
過去問をまとめた冊子をひょいと持ち上げてテスト範囲の問題に1通り目を通すと、私の手からシャーペンを取り、印を付けていく。
「基本の問題を掻い摘んでやって、あとは基本的な問題で使った公式をまとめて使う問題をやっていけば覚えられるんじゃないかい?ココナは暗記はできるみたいだし、カラダに教えこめばいいんだよ❤」
「じゃあ印の付いているところをやってね♦」と手渡された紙に目をやる。
「えっ、こんなに…」
これで掻い摘んだの?と言いたい量だが、範囲の広さからこんなことになっているのだろう。
もっと早くからやれば良かった…なんてどうしようもないことを考えてしまう。
「ほら、余計なことを考えている暇はないよ♠どんどん解いて❤」
ニヤニヤと笑うスパルタヒソカ先生に監視されながら、私は必死で手を動かした。
行き詰まったところや、わからないところを見つけ、教科書を開こうとすると、「待って♦」と教科書の上にヒソカの手が置かれる。
「ココナは今、どの問題がどう分からなかったんだい?」
「えっ、この問題の…」
どの部分がわからなかったのかをヒソカに説明する。
「これで自分の弱いところがはっきりわかったじゃないか♠テスト前に確認するときはちゃんとチェックだね♣」
そう言われて確かにわからないところが確認できたことに気がつく。
「で、ここがわからないんだよね♦ここの解き方は…」
基本の基本から教えてくれるヒソカの説明はわかりやすい。
説明してもらっても理解できずに何度説明を求めても嫌な顔をせずに教えてくれてとてもありがたかった。
そうして私は自分の弱いところを頭の中で整理し、ヒソカに教えてもらいながら黙々と問題を解き続けた。