非日常のとビら

□4日目 知らないお兄さん
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ベッドでごろごろとして寛いでいると、また例の扉が開く音がした。

また誰か来たのか…と反射的にあの扉に顔を向ける。


知らないお兄さんと目が合った。


するとお兄さんは無言でばたむ。と扉を閉めた。が、またゆっくりと扉が開き、そっと顔を覗かせると「えっ?」と声を漏らす。

それは私も言いたい。
私はこの綺麗な金色の紙で透き通る黄緑色の瞳をしたお兄さんを知らない。

そして何度も言うがここは私の家で私の部屋だ。


「どちらさまですか?」


意を決してお兄さんにそう尋ねる。
クロロ達と同類だろうから何かしらされないか少し不安だ。とりあえず殺さないでね。


「オレはシャルナーク。君は?ここはどこ?」

「私はココナでここは私の家。あと床が汚れるから靴は脱いで。てかその扉ってこんなにいろんな人が来れるような場所にあるの?」


てっきり私はあの4人が固定メンバーだと思っていた。
そして4人しか知らない場所にこの扉があると思っていた。
しかしそれは違ったということはこの目の前にいるシャルナークの存在が証明している。


「まさか普通に屋外にあるの?」


セキュリティがどうたら〜みたいな話をしたが、屋外にあればもう誰でも入り放題だ。


「うーん、屋外ではないけど屋内とも言い難いかなあ…」

「どういうことだよ…」


屋外ではないが屋内とも言えない。ほんとにこの扉はどんな所にあるんだ。

クロロは恐らく私も私の側の世界とクロロ側の世界を行き来できると言っていたが、自分から行こうと思ったことは無かったけど、今は扉の周りがどうなっているかどうしても気になる。


シャルナークの横を通り過ぎて恐る恐る扉を開けて周りをのぞき込む。

確かに外ではないみたいだ。
そこはコンクリートでできた建物のようだが、なかなかにボロいしなんだか汚い。
すきま風がすごいようでひゅーひゅーと風の音が聞こえるし、ひび割れた壁から光がさしている。
もちろん私は靴を履いていないので外には出られないし、シャルナークを置いて外の世界に出るのはどうかと思う。
それにそもそも1人で知らないところ、それも別世界をうろつくなんて私の度胸では無理だ。
靴取ってくるのもめんどくさいし…

話が脱線したけれどここの扉を出したやつはなんて所に置いてくれたんだ。
見た感じここは出入り自由な空間っぽい。
これはほんとに誰でも入り放題なのではないか。
この扉鍵とか付けられないんですか。


「ああ、安心してよ。多分ここは旅団の人間くらいしか来ないと思うし」

「シャルナークも旅団の人間なのか…じゃあクロロが何か説明してるんじゃないの?」


そういえばクロロは旅団の団長とかなんとかって自慢げに言ってたことを思いだす。
彼はその中の1人だったのか。


「私深くは知らないんだけど、旅団って何人構成なの?」

「団長入れて13人かな。あと最初の質問だけど、団長は面白いものを手に入れたってしか言ってなかったから何のことだかよく分かってなかったんだよね。それに今の状況だってよくわかってないし…」


へぇ、そんなにいるんだ…
そしてクロロの大雑把過ぎる説明に少しイラッとする。
シャルナークを立たせたままにするのはなんだか申し訳なく感じたので椅子に座るように促した。


「私から説明するのもどうかと思うし上手く説明できないと思うけど私の話すことはどうやら本当のことだから」


そう前置きをしてからベッドに座り直す。


「クロロが言うにはここはシャルナークのいた世界とは別の世界なんだって。私は貴方のいる幻影旅団なんて知らないし、有名な暗殺一家もいないめちゃくちゃ平和なところなの」


「ここに来た奴らには言ったけどここで騒ぎを起こすのはやめてね」とあの4人に言った忠告をまた説明する。

できれば私はもっとしっかり説明していて欲しかった。
今度クロロが来た時に、鍵問題と一緒に説明をちゃんとしておいてと言っておかなければ。


「ふぅん。なんか刺激のないところだね」

「私はシャルナークのいる世界が物騒すぎて恐ろしいけどね」


殺すって言葉を本当の意味で使う奴らが蔓延る世界なんて嫌だわ。

友達に殺すぞと言われるのと重みが違う。こいつらの殺すは冗談にならない。ガチの重みだ。


「いや、ほんとに頼むから軽率に人を殺したりしないでね…」

「扉壊されてこっちの世界に来れなくなるのは面白くないし大丈夫だよ」


あははと笑う彼を信用していいのだろうか。
彼の笑みはなんだか作られてるもののような気がして何となく落ち着かないのだ。

イルミの笑い方も怖いけれど彼のはもっと怖い。


「そんな警戒しないでよ。最初扉を開けた時は殺すか迷ったけど直感的に即決はしなかったんだから」


シャルナークの直感とやらが働いて本当によかった。
それがなければ私はさっくり殺られていたのだろう。


その話を聞いてどくどくと心臓が動いていることを主張し始めたのは言うまでもない。
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