非日常のとビら

□0.5日目 非日常の訪れ
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仕事である念を手に入れた。
どうやらその念を使うと異世界とやらに行くことが出来るらしい。

これを持っていた男は汚い仕事をしては事が収まるまで異世界に逃げていたようだが、そんな使い方は実に勿体ないように感じる。

本当に異世界とやらに行けるかは怪しいが、1人で行っても面白みがないだろう。


「で、なんでオレが呼ばれたの?」


面倒くさそうにイルミがオレに尋ねてくる。


「あれ、イルミに何も説明していなかったのかい?」


クククッと笑いながら肩を竦ませる。


「ちょっと何、ヒソカは知ってるの?オレ帰っていい?」

「待て待て、絶対面白いから」


踵を返すイルミの腕を掴んで引き留める。

そのやり取りをただただ見ているフェイタンはこの能力を奪った時に居合わせていたため、興味を持ったようでここにいる。ヒソカもそんな感じだ。

イルミに軽く説明すると、益々訝しげな顔をこちらに向ける。
それも無理はないと思う。自分だってまだ信じている訳ではない。あれば面白いな程度の認識だ。これは能力を使ってみるのが1番手っ取り早いだろう。


スキルハンターを発動させて奪った能力を試してみると目の前に扉が現れた。

扉を開けて中に入ると、どうやらそこは室内のようだった。


「ここは何処だ?」


ぽつりとそう零れ出た言葉に返答する者はいないだろう。
しかしここは異世界だ。という確信を持つことができるほど自分たちの世界と変わっている部分は今のところ無いように感じる。


「クロロの念でしょ。オレまだ仕事があるんだけど」


イルミも変わりのなさを感じ取ってかそうオレに文句をつけてくる。


「俺はただ異世界にいける能力と聞いて面白そうだから盗って来てそれを試しただけだ。そこの扉から帰ることが出来るから問題ない」


オレが知っているのは異世界に行けるということだけでどんな所に行くかは知らなかった。

先ほどいた場所からは風景ががらりと違うからあの場所ではない何処かにいるのは確かだ。


「へぇ、ここ異世界なんだ♦全く実感ないね♥」


キョロキョロとしながらヒソカが入ってくる。すると「あ、あの…どちら様ですか?」というオレ達の誰でもない女の声が聞こえてきた。

「誰?殺す?」


イルミが鋲を構え女に放とうとする。
しかしここに現地の人間がいるということはこの世界のことを知ることができそうだ。


「いや、いい。それより、ここは何処だ?」


殺そうとするイルミを止めて場所を探る。


「私の家ですけ」

「そうじゃない。国名だ」

「日本です」

「日本?聞いたことないな。少し聞くが、幻影旅団って知っているか?」


自分達の世界では知らない人のいる方が珍しい幻影旅団というワード。
自分の世界ではこの名を聞いただけで震え上がる人間も多いがこの娘はさーかす…?とぶつぶつ呟きながら考え込んでいた。


「本当にここは異世界のようだな。面白い。しばらくここに邪魔させてもらおう。いいな?」

「え?」


女の行動でここが異世界だということがわかった。
見たところこの家にはこいつくらいしかいないようだし今はまだ人との接触が少ない方が都合がいいだろう。

女の方は少し不満げだが少し圧をかけてみると嫌そうな顔をしながら口を開いた。


「いや、あの…あなた達は何者なんですか?」

「ああ、まだ名乗っていなかったな。俺は幻影旅団団長、クロロ=ルシルフルだ」

「ボクはヒソカ♦」

「イルミ=ゾルディックだよ。暗殺者の」

「・・・フェイタンね」


異世界ということに気を取られすぎて名乗るということをしていなかった。
先に名乗った方が協力を得やすくなっていたかもしれないのに少し失敗したな…と思いながらも、ゾルディックの名前を聞いても眉一つ動かさないこの女がなんだが可笑しくなってくる。
自分の世界ならば真っ先に殺されているだろう。


「は、はぁ。えっと、私はナヤマココナです。あの、大変不躾ながらクロロさん達に聞きたいことがいろいろあるんですけど…」


妙に堅苦しい言い方だ。その言い回しで割かれる時間がもったいない。
それにしてもナヤマという名前は少し変わっている。


「その前にそのくどい敬語をやめろ。ナヤマが名前か?」

「殺さないなら…」


イルミの言った暗殺者というワードに少し危機感をもったから突然更に堅苦しい言い回しになったのだろう。
少しは危機管理能力があったようだ。


「じゃあ敬語を使ったら殺すってどうだい?」


そんなイルミの発言にイルミもこの女に楽しさを見出していることがわかる。
その言葉に血相を変えて女…ナヤマはわたわたし始める。


「わかりました。ではつかいまって待って!使わない!」


一瞬敬語がでたことを取り繕うかのように両手を前に出す。
フェイタンが鋭い爪を見せながらナヤマに近づいていくと、「ぎゃあああ!ごめん!って言ってるじゃん!やめて!」と叫んでいた。
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