非日常のとビら

□7日目 おえかき
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「あー、果てしなく暇だなあ」


ベッドに身を投げている私は1人でそう呟く。

一人暮らしはなんだか独り言が多くなる気がする。
最近妙なことがあったせいで独り言が拾われることが多くなったけど。

今は犯罪者共がいないせいで話し相手もいない。
本当にただただ暇だが、こんな風に時間の無駄遣いができるのも学生だからだ。
もう一生学生でいたい。

でもこのままなのもなんだか勿体ない気がする。

私はベッドから起き上がると机に向かった。
もちろん勉強するためではない。


パラパラとノートを開くとペン立てに立ててあった鉛筆を手に取る。


「うっさぎさん、うっさぎさん」


即興ソングを口遊みながらノートに絵を描いていく。
無事に描き上がり顔をあげて次は何を描こうかと思案していると背後から声がかけられた。


「なんだそれは…妖怪か…?」

「えっ、ちょっと聞き捨てならないんだけど」


そんな失礼なひと言に私はすかさず反応を示す。


「これは何処からどう見てもうさぎじゃないのよ」


先程描いた絵を失礼な発言をする男…もといクロロの前で掲げて見せる。


「お前…それを本気で言っているのか…?」


眉根を寄せて信じられないというような表情で私に聞いてくる。

そうだった。そう言えばこいつは盗賊。絵に精通していてもおかしくはないだろう。
それならば、だ。


「そこまで言うならクロロがお手本見せてよ」


そこまで私をディスるならこいつはさぞや絵が上手いのだろう。


ノートと鉛筆を彼に渡すと席を譲る。

数分すると「できたぞ」とノートが私の前に差し出された。
そしてクロロの描いた絵を見て私は戦慄する。


「えっ?ちょっと待ってこれ人のことだいぶ言えなくない?てかむしろ私の方がうさぎしてるよ」


クロロが自信有り気に私に見せたその絵は何処からどう見てもうさぎには見えない。
どちらかというと…


「も、モンスター」

「は?これは何処からどう見たって可愛い≠、さぎだろ?」

「嘘でしょ?この期に及んで可愛い°ュ調する?普通にホラーだよ?」


形はうさぎに見えなくはないが、顔がとんでもなくきもい。
逆にどうしてこうなったのかが知りたいくらいだ。

どうやら…絵に詳しいからといって実力が付いてくる訳では無かったみたいだ。
不思議な扉を普通に出してくるような異世界の人だからなんでもできると思っていたが、ちゃんと人間だったようだ。よかった。


そう謎の安心をしていると、納得のいかない表情をしているクロロと目が合った。


「そんなに納得いかない?なんで?」


クロロは私が思っていたよりもずっと頑固だったのだろうか。
いや、今迄過ごしてきた時間は微々たるものだがこんな無意味なことで彼が時間の無駄遣いをするような人間には思えない。

しかし狂言のようにも見えないからこの男は本気で自分の方が可愛い≠、さぎを描いたと思っているのだろう。

ここで私が折れればきっと彼は納得するのだろうが私も面倒な性格をしているなあとしみじみと思う。

だって何処からどう見たって私の方が絶対上手いのだからここで私が折れるのはなんとなく癪に障る。

しかしこのまま当事者同士で争っていても埒が明かないだろう。
そこで私はある提案をした。
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