非日常のとビら
□8日目 風邪をひく
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あいつらがここに遊びに来るようになって早3ヶ月。
端的に言うと私は体調を崩した。
原因は大方、命の危険を感じるスパンが短く疲労が溜まったのだろう。
ここ1ヶ月は彼らも慣れてくれたのか、私も慣れたのかなんだかんだで親しくやっていた。仲良くなることができている…と思いたい。
そこで私の力が抜けて疲労が押し寄せたのだと思う。
仕方がないので今日は先生におやすみの電話を入れて台所に立つ。
何かお腹に入れて薬を飲まなくては。
一人暮らしはこういうところが辛い。
ご飯を適当にお鍋にいれると、お水と麺つゆ、鰹節と卵を混ぜ込んでおじやを作る。
食欲があまりなかったのでお皿によそってダイニングテーブルに置く。
お薬、面倒くさくなる前に取りに行かなくちゃ。
リビングにある棚の中に薬箱はある。
お薬を薬箱から取るとダイニングに戻るところで視界がゆがんでブラックアウトした。
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目が覚めると私はベッドにいた。
あれ、私は確かご飯をたべようとして、それで…
ぼんやりとして上手く働かない頭にズキリ痛みが走る。
その部分に触れてみるとたんこぶができていた。
たんこぶ…?
「あ、ココナ。起きた?」
その声はベッドサイドから聞こえてそちらに視線をやるとイルミが腰掛けていた。
「大丈夫?ココナ倒れてたからオレびっくりしたよ」
そうイルミは少し安心したような表情を見せる。
すると部屋の扉が開いて、桶を持ったヒソカが入ってきた。
「ココナおはよ♦調子はどうだい?」
そっと私の額にあったタオルを取り手を当てるとまだ熱があるみたいだね♥と言ってそのタオルを桶に浸した。
彼らはわざわざ私の看病をしてくれたのか。
なんだか心が、じんわりと暖かくなる。
「看病なんてすることないからどうしたらいいかわからなくて、不本意だけど丁度そこにいた変態を呼んだんだ」
「執事たちを呼ぶわけにもいかないから」と付け足すイルミにいろいろツッコミを入れたかったが生憎そんな元気はなかった。
「喉は乾いてない?スポーツドリンクあるよ」
「もらう」
スポーツドリンクを注いだコップにストローを刺すと私に渡してくれる。
あれ、私の家にスポーツドリンクなんてあっただろうか。
「これを買うのにココナのお金勝手に使わせてもらったんだよね♦あと薬の瓶が割れてしまっていたから新しい風邪薬とかゼリーとかも買ってきたんだ♠」
私の心の中を読むようなタイミングでヒソカがそう言ってくる。
そう言われてから気づいたがイルミもヒソカもまともな格好をしていた。
美形なだけあってめちゃくちゃ似合う。
似合いすぎて一緒にお出かけする時に、変な気を遣いそうだ。
きっとこいつらは相当人目を引いたんだろうな。
…そういえば私は今までイルミ、ヒソカを含めた異世界の人が家から外に出ているところを見たことがない。
つまり彼らは私の為にわざわざ外へ買い物に…なんて自惚れだろうか。
「安心して、それだけにしか使ってないから。物価はそんなに変わらないんだね」
「ううん、別にいいの。わざわざありがとう」
私だって彼らのことはそれなりに信頼している。
優しくして油断させた所で何かしようと思っているのではないかとも思っていたけれども、そんなことは絶対にしないと口に出してすらいないのにみんなに否定されたのだ。
裏切ることがあれば扉を使えないようにするとまで言われたからこの扉が用無しになるまでは大丈夫なのだろう。と思っている。
それに彼らはわざわざ私を看病するためのものを買ってきてくれたのだから怒る理由など何処にもなかった。
「イルミ、ヒソカ看病ありがとう。後は1人でだいじょ」
「だーめ❤キミは病人なんだから今日は大人しく寝てなさい♣」
「でも、」
「でもじゃないよ。言いたいことは風邪を治してから言ってね」
立ち上がろうとする私を2人はそう止めてくるので大人しく寝床に入る。
私の枕はいつの間にか氷枕になっていることからこれもわざわざ見つけ出してくれたのだろう。
「ココナご飯食べる前に倒れちゃったみたいだけどお腹は空いてない?」
そうか、私は食事前に倒れたんだった。
食欲がもともと無かったせいと寝起きのせいで全くお腹が空いていない。
「何も食べたくない…」
「うーん、気持ちはわからなくもないけど何かお腹に入れないと薬が飲めないからね。ゼリーなら食べられそう?」
普通のご飯よりはそちらの方が喉の通りがいいだろう。
こくりと頷くとイルミは立ち上がってゼリーを取りに行った。
「しおらしいココナは素直で可愛いね♦」
そうニヤニヤと笑って私の頭を撫でてくる。
「家事は終わらせておいたからココナは何も気にしなくていいよ❤今のココナも可愛くて好きだけどボクはいつものココナが1番好きだからボクの為にもはやく良くなりなよ♣」
ちゅ、と額にキスが落とされる。
それに反応して私の心臓はとくとくと主張をしだす。
最近みんな私に甘い。
勘違いで自惚れるのは恥ずかしいのであちらの世界では仲良くなった人間に対しての礼儀なのではないかと思うようにしている。
しかし耐性のない私には刺激が強すぎるから正直辞めてもらいたかった。