非日常のとビら
□8.5日目 風邪をひく
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ココナの部屋を訪ねるとなんだかしんとしていた。
そう言えば今の時間ココナは学校に行っていた気もするがこの家に人の気配を感じる。
ココナは戸締りをしっかりしているはずなのにこうして侵入者が入ることがあるのだろうかと不思議に思いながら気配のする方…リビングに向かった。
「ココナ?」
扉をそっと開けるとキラリと光るガラスの破片が見えた。
驚いて勢い良く扉を開けるとココナが倒れていた。
「ちょっと、ココナ大丈夫?」
駆け寄ってココナを抱き寄せてそう小さく揺すってみるが反応はない。
息が少し乱れている上に、体温が高いことから恐らく風邪なのだろう。
割れているガラスは薬の瓶だったようだ。錠剤が床に転がっている。
ココナに怪我がないか確認すると、倒れた時にできたであろうたんこぶができているだけで、ガラスで切ったような傷は見当たらなかった。
このまま床に寝かせて置くわけにも行かないので部屋まで連れていき、ベッドに寝かせてやる。
しかし困ったことに自分には看病の経験がない。
看病スキルのない自分が看病するべきではないと思い、不本意ではあるが1度自分の世界に戻り、助っ人を呼ぶことにした。
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「それでボクを呼んでくれるなんてね♥」
「やむを得なくだよ。オレだってヒソカなんかに頼りたくなかったけど1番家事ができるのはヒソカでしょ」
ニヤニヤとしているヒソカは腹がたつがこういう事ができるにはできるからここはココナの為にも諦めるしかないのだろう。
今ここでヒソカのやっていたことを覚えて、次からはこいつに頼らなくてもいいような環境を作る他ないのだから。
「結構熱が高いね。桶とタオルを持ってきて頭に乗せて冷やしてあげないと♦あと氷枕とかはあるかな♠」
そうヒソカはつぶやくとオレは水を汲んでくるよう指示されて冷水を桶に溜めてタオルを持っていく。
フェイスタオルだと重たいだろうから少し大きめのハンディタオルを持ってきた。しかし、これでよかったのだろうか。
熱が高いようなら太い血管の通っている部分を冷やすことが必要なのは分かる。
しかしココナの熱はそれをしなくてはいけないほど高いのかがわからない。
下手なことをして悪化させるようなことはしたくないので大人しくタオルを水に浸して絞り、額の上に乗せてあげるとココナの表情が少しだけ楽そうになったように見えた。
「氷枕見つけたよ❤」
からからと枕の中で氷がぶつかる音が心地いい。
ヒソカは気持ち悪くないように氷枕にタオルを巻くと、ココナの頭を少し持ち上げて枕を取り替えた。
「ココナは一応自分でご飯を作っていたみたいだけど、この調子じゃあのご飯食べたがらないだろうし流動食が必要かもね♠」
「流動食ってスープとかゼリーとかプディングみたいな?」
「広く取ればそんな感じだね♦でも見たところこの家にはそういうものがないんだよね❤」
どうやらヒソカはちゃんと看病に必要なものがあるかどうかを調べてきていたらしい。
「え、まさか買い物に行くの?土地勘ないのに?」
ヒソカのやろうとしていることにピンと来てしまったがさすがにそれは無謀な気がする。
「ココナのためだもの♠それに場所はPCで調べればいくらでも出てくるだろ?」
ココナに使ってもいいと許可されたPCでヒソカはいつもココナが行っているスーパーの位置を調べ出した。
オレは小さくため息をつくと頭のタオルを取り替えるとそっとココナの頭を撫でる。
指の間からさらさらとこぼれ落ちる髪を見るとなんだか頬が緩んだ。
「みいつけた❤だいたい場所はわかったよ♦服、着替えないとね♣」
そうだった。外の世界に出るのは初めてだが、テレビで他の人間を見たことはある。
一応この世界での普通≠ヘ心得たはずだ。
それにこのお昼を少し過ぎた時間帯にスーパーにきっちりとしたスーツで現れるのはいささか不自然であるのでスーツを着ることはできない。
仕方なく用意していた私服を着ることにした。
服はココナの家に置いてある。
いちいち持ってくるのがめんどくさいものは置いておいていいと一部屋貸してくれたのだ。
俺は黒のチノパンツを履くと白いシャツに腕を通してベストを羽織った。
武器を持たないのは少し落ち着かないが使うこともないだろう。
むしろ使ったらココナに怒られてしまう。
ヒソカも黒のクロップドパンツと無地の白いTシャツ、そしてジャケットを羽織っていた。
よし、こんなものだろう。
「こっちの通貨を俺たちは持っていないからココナの財布を勝手に持っていかなきゃいけないんだよね…」
買いに行くのはココナのものだが勝手に人の財布の金を使うのはなんだか後ろめたい。
だからといって具合の悪いココナを起こすのも可哀想だ。
「ここは起きた時に謝ろうよ♦ここの世界のお金では返せないけど自分のとこのお金で返すとか何でもできるだろうし♠」
ヒソカはぐいぐいと物事を進めていく。
ここでぐだぐだしているといつまで経っても事が解決しないからだろう。
病人を1人にするのは不安だが初めての外の世界に1人で行くのも行かせるのも不安だ。
申し訳ないがここはココナを1人にしていく他ないだろう。
タオルを取り替えてあげるとオレ達は部屋を出た。