非日常のとビら

□9日目 ずるい
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「何、突然」


今は午後8時半。突然ここを訪れるのはいつものことだが今日はなんだかクロロの雰囲気が違う。


「ココナは明日休みだろ?」


クロロは意味深な笑みを浮かべながら私にじりじりと近づいてくる。
とても嫌な予感がした。


「なに、私に何をさせる気?」

「別に何も企んでいないぞ。ただ旅団のホームに案内しようと思ってだな」

「え、やだよ!犯罪者の集団のホームとか命が何個あっても足りないって!」


一般人の私が遊びに行けるような場所じゃない。一般人じゃなくても行けるような場所じゃない。

それにクロロが良くても私のような普通の人間が遊びになど行ったら旅団の人は警戒するだろうし、クロロのいない所で私を殺してどこかにいなくなったとか言われかねない怖すぎる。


「考えてる事はだいたい分かる。その可能性を考えてお前のそばを離れない」

「いやいや。何でそこまでしてそっちに行かなきゃ駄目なの。しかもなんでこんな夜に…」


そこまでして私を連れていこうとする意味が分からない。


「ココナは外の世界が気にならないのか?」

「気になりはするけど初っ端から難易度ラスボス並みじゃんせめて街とかがいいんだけど」


「私デートするならお家デートよりお外がいいなあ…」なんてクロロの袖を掴んで上目遣いでお願いしてみる。


どうせこんなの効果はないだろうけど…
なんだろうすごく恥ずかしい。


視線を逸らしてぱっと手を離す。


何を私はしているんだ。


しかし意外にも効果があったようで。


「そうか。ココナがそういうなら今度街にも連れていこう」

「うーん…そういうことじゃなかったんだけどなー…」


どうやらホームに行くのは決定事項のようだ。

唯でさえシャルナークという存在がだいぶ怖いのにそんなのがゴロゴロ集まる所に行くと考えるだけで気分が何となく落ち込む。


「遅かれ早かれ会うことになるから別にいつ会っても同じだろう?」

「なーんでそういう考え方になるかなあ…」


ああ、頭が痛い。
この人は何を考えているか全くわからない。

もう何でもいいや。いいよ。行ってやろうじゃないの。

部屋着から着替えてクロロの前に立つ。髪までちゃんと結んでやった。


「ほら、準備したよ。行こ」


自らクロロの手を取ると彼は何故か嬉しそうに顔を緩めた。
なんだこの男は。自分で手を取ったのになんだか恥ずかしくなるじゃないか。

すごく自己中のくせにこういうところを見せてくるのは狡いとおもう。

妙に機嫌の良くなった彼に連れられて私は初めての異世界に足を踏み入れた。
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