非日常のとビら
□15日目 ききめC
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始めは探索をしたことによって体が温まったために暑いと感じているのだと思った。
しかし時間が経過するにつれてどんどん体の力が抜けていき、そして息が切れてきたことから、これは薬の効果だということに気づいた。
タイマーを見ると残された時間はあと15分。
扉を開いていないのはカルテに書かれていた404号室。
まだ解き終わっていない謎解きがあるが、404号室に何かある可能性は高いと思った。
壁を伝ってのろのろとその扉の前まで来ると、鍵を差し込んで倒れ込むように部屋の中に入った。
その中央には大きなベッド、壁際には怪しい道具達、ベッドサイドにある小さなチェストにはいくつかの引き出しがあった。
そして部屋の奥の方にはガラス張りのシャワールーム。
自分の体の変化で薄々勘づいてはいたけれど。
頭がぼうっとしてきて体の芯が熱くてたまらない。
立っているのも辛くなってベッドの傍にへたりこんだ。
「い、るみ、」
はあ、はあ、と肩で息をしながら無線機を取り出すためにスカートのポケットを探るが、その動きでさえ甘い痺れとなって襲いかかってくる。
だめだ。私はもうだめなのかも。
イルミが来てくれたら…
「あ、いたいた。大丈夫?」
聞き覚えのある声が聞こえて私の上に影がおりる。
生理的な涙で潤み、少しぼやけた視界を床から少し上にあげた。
そこにはイルミがいた。どんな手段を使ったかわからない。しかし確かに彼は扉の前に立っていた。
「だ、だめ、こ、ない、で、」
身体の芯の方が疼いて辛いのだ。今イルミに近づかれたら。
「盛られたの、びやく、だったの。イルミに来られたら、わたし、わたし、イルミが欲しくなっちゃう」
そんな間にも思考が蕩けていって快楽に身を任せたくなる。
じんじんと焼けてしまいそうなもどかしさに思わず内腿を擦り合わせるてしまう。
「その様子を見れば童貞だって発情してるってわかるよ」
ほんとは食べちゃいたいところだけど…と少し悩ましげにイルミが言ったと思えば腕にチクリと痛みが走った。
少しすると今までの熱が嘘であったかのように引いていき、乱れた呼吸も整ってきた。
「よ、よかった…ありがとうイルミ」
身体の調子が戻りほっとする。
純潔を失うところだった。
「ココナはあの薬でここの囚人達に回される予定だったんだと思うよ。この薬があったのも隠し部屋のすごくわかりにくいところだったし逃したくなかったんじゃない?」
「えっ、じゃあここに男が落ちてきてたらどうしたんだろう…」
塔のシステムはどの扉に入るかは選ぶことができるけれど、その中の試験内容はわからない。
「男が来たか女が来たかによって試験内容が変わってる可能性は無きにしも非ずじゃない?」
「えっ?なんで?」
「だってそのタイマーについてた薬だって遠隔操作っぽいし、上の謎解きで6時間かかったならこの一部屋くらいどうとでも変えられるし。そもそもの試験官の性別変えたら全部解決じゃん」
頭が柔らかくないからそこまで考えられなかった。
私はずっと時間に追われていたから時間が進むのが早く感じていたのもあるだろう。
「外に囚人いっぱいいたからあと少しでココナが食べられちゃうところだったよ。みんな殺したけど」
「こういう所にいると女に飢えるのかな…私でもよかったとか可哀想…」
殺したという言葉はスルーして素直な気持ちを述べる。
「私の純潔を失うところを助けてもらったことには感謝してる。それとイルミには申し訳無いことしたね…薬の効果で理性が飛びかけていたとはいえ見苦しいもの見せた…」
あともう少し遅ければきっと自らイルミを求めて薬が切れた頃に泣いていたはずだ。
巻き込まれた側だから文句を言いたいところだけど助けて貰ったのも確かだから謝る必要は大いにあるだろう。
「巻き込んだのはオレなのにそういうとこ律儀だよね。ココナは男を煽るのが上手だってわかったから誰かに食べられちゃわないか心配だよ」
「ちょっと真面目に言ってるのに変なからかい方するのやめてよ恥ずかしい」
薬が効いていたとはいえ私はイルミにえっちなことをさせようとしたのだ。
最悪だ。記憶から消したい。
「いいもの見たし別にいいよ。ちょっとここで待ってて」
ごめんね、と付け足して部屋を出ていく彼を見ると取り残された私も申し訳なくなる。
私の貧祖な体に反応してしまったであろう彼が何をしに行くのかはわかった。
試験内容が9割悪かったとはいえ私にも1割くらい非があるため何も言えなかった。
それに彼が来てくれていなかったらどうやら私はぱくりと食べられていたらしい。
まああの薬の強さから想像は容易いけれど。
このまま変な雰囲気でいるのもなんだか嫌だからイルミが戻ってきたらどんな話をしようかと考えを巡らせた。