非日常のとビら

□28日目 クリスマス
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いつものようにベッドの上で乙女ゲームをしていると扉が開き、ひゅう、と冷気が入り込んできた。


「寒いから早く閉めてよ」

「ココナはこんな日でも家にいるんだな。彼氏いないのか?」

「1つ下の次元にいるの。ほら」


ゲームの画面を見せると鼻で笑われた。
こいつ。
というかそもそも、いつもいつも家に来ているのだから答えはわかっているくせに。


「2次元はいいぞ。顔はイケメン。性格も良くて私を愛してくれる。そして絶対浮気しないし裏切らないもの!」


人間の心は移ろいやすいからこれくらいでちょうどいい。
私はこれで満たしてる。


「そんな素敵な人この次元にはいないしそもそも彼氏ほしいと思ったことないし、それに」

「オレはココナのこと愛してる。誰にも渡したくない」


すっと私のゲーム機を取り上げられるとクロロと目が合う。
こいつの顔も確かに恐ろしく整ってるよなぁなんて思いながら突然意味わからんことを言い出した彼を見つめる。


「なんだ、少しは顔を真っ赤にするなりなんなり可愛い反応をしろよ」

「だって私のことをからかってるってわかってるのに乗っかるのって癪に障るじゃん」

「からかってる訳じゃないんだがな」


私の手にゲーム機が返却されると何故かクロロは少し寂しそうな表情をみせた。

するとまた冷気を感じて扉の方を見ると、次はイルミが来ていた。


「なんだ、クロロもいたのか。せっかく今日は仕事入れなかったのに」

「いらっしゃい。イルミはすぐ扉閉めたから許すわ」


布団に顔を埋めると、「ココナまたパジャマなの?少しはらしい格好したらどうなの?」なんて言ってベッドに寝転がる私に何かを掛けた。


「えっ、何これ」

「見ての通り服だよ。ココナ制服かパジャマじゃん。ちゃんとした服着なよ」

「えっ、なんで突然こんなもの持ってきたの?そんなの今に始まったことじゃないじゃん」


確かに私は家に帰ったらすぐパジャマに着替えてしまう。
休みが長期の時はパジャマからパジャマに着替える生活だから外にお買い物に行く時以外はほとんどパジャマだ。

別に服を持っていないわけではないけれど別に誰かに見せる訳でもないからパジャマが1番落ち着くのだ。


「ココナは一応女なんだから少しは身なりに気を使ったらどうだ。お前年頃の女の癖にその辺には興味を示さないよな」

「そう言うけどさ、家の中でまで気を遣う必要ないじゃん。服が嫌いなわけじゃないよ?イルミのくれるお洋服は上等すぎるんだよ。私じゃ服が泣く」

「ココナ家の中ではって言うけど外に出る時だってクローゼットから適当に取ったり洗濯物で干してあるものから取るからほとんど同じ服しか着てないじゃん。オレがココナに似合うと思ってプレゼントしてるんだから絶対似合うし」


確かにイルミのセンスはとてつもなく良いし、私の服の好みもしっかり把握している。
そして私はやっとこの状況を理解した。


「今日クリスマスか」


ゲーム機のホームボタンを押すと12/25と表示されている。
こいつらが今日ここに集まっているのも、イルミが私に服を渡すのもそういうことか。


「てか2人にそういう概念があったことにびっくりなんだけど」

「オレはそこまでイベントに興味がないココナの方にびっくりなんだけど」


2人がわざわざイベントのために集まったなら私も何かしなくてはいけないじゃないか。

今は18:30。ケーキは間に合わないだろうけどチキンくらいなら間に合わなくはないだろう。

ゲームの電源を落とすとベッドから起き上がった。


「仕方ない。それなら私も出かけてクリスマスらしいものくらい買ってくるわ。お洋服ありがとうイルミ」


服着替えるからリビングで自由にしててよ、と言うと丁度ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。


「オレ出るよ。宅配便だったらナヤマって書けばいいんでしょ?」

「そうそう。ありがとうじゃあ頼むわ」


2人が部屋を出ていったところでイルミがくれたお洋服を手に取る。

冬物のワンピースにそれに合うコートとショートブーツ。バッグまでセットになっていてとんでもなく可愛い。

これほんとに似合うかな…なんて少し不安になりながら袖に腕を通した。
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