非日常のとビら
□21日目 親フラ
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ガチャガチャガチャと乱暴にボタンを押す音が部屋に響く。
「あー!やばい痛い痛い!キャベツ!キャベツ助けて!おーナイスナイスいいよ」
「お前もう少し黙ってゲームできないのか」
「静かな狩りって難しくない?だってあっちめっちゃ咆哮あげるし」
ソファーで本を読んでいるクロロの膝に頭を乗せてゲームをしながら凍らせたチューペットを齧る。
「それにキャベツってなんだ」
「オトモの名前だよ?ちゃんと緑色のネコなんだ」
私のキャベツは優秀だから回復とか状態異常回復を丁度いいタイミングでしてくれる。
そしてめちゃくちゃかわいい。
「お前その角度から見るとすごくブスだな」
「張り倒すぞ」
クロロの悪口に食い気味で言い返すとリビングの扉がひらいた。
「あ、イルミいらっしゃい」
「なんでクロロココナに膝枕してるのずるい」
「ココナが自ら来たんだ」
「あれ、今日イルミお仕事着じゃないんだね」
2人の小さな口論はガン無視して黒い細身のパンツに少しダボっとしたTシャツにカーディガンを羽織っている。
「今日は仕事休みだしココナをデートにでも誘おうと思ってこの世界に合った服を着てきたんだけど?」
「クロロいるからデート3人になるよ?」
クロロの服装もこの世界に適しているから絶対付いてくる。
「じゃあ今日はやめとくよ。ココナ遊ぼ」
「えー、今私狩りしてるんだけど」
「ココナハンターになったんだから本物の狩りに行こうよ」
「馬鹿じゃないの?行くわけないじゃん死ぬ」
私はバーチャルで済ませたい。
ていうかリアルでハントできるようになるなんて思いもしなかった。
「ココナがライセンスを取ったって聞いた時は耳を疑ったが本当だったとはな」
「最終試験が戦闘だったんだけど、ココナね」
「わー!わー!ストップストップ」
急いで起き上がって最終試験のことを広めようとしているイルミの口を手で塞ぐ。
「なんだ、気になるじゃないか」
「やめて本当にあれは乙女ゲームから思い立った痛い技なんだから」
「だってクロロ。話しちゃダメなんだって」
「いい。今ヒソカに聞く」
「ちょっとほんとにダメだって。あれは不本意なの!」
ヒソカに連絡しようとするのを止めるためにクロロの携帯を取り上げると机の上に置いた。
「わかった!わかったから!遊ぶ。ごめんイルミ一緒に遊ぼう?クロロも一緒に遊ぶ?」
「ココナがそこまで言うなら遊んであげてもいいよ?オレあれがいいな。ココナがいつもやってるゾンビのやつ」
「オレは本を読んでいるから遠慮しておく」
「了解。じゃあやろうか」
イルミのリクエストを立ち上げるとコントローラーをイルミに渡す。
このゲームを誰かとやるのは久しぶりかもしれない。
前はネットの友達と一緒にやったけれど時間が経って新しいのが出ているせいでずっとやっていなかったのだ。
「やり方わかる?ここで銃を構えてここで撃つ。あ、今は撃たないでね弾が勿体無いから」
一通り動作方法を教えるとストーリーモードでゲームスタートする。
イルミもなかなかゲームが上手くてヘッドショットしまくっている。
イルミとハントに行きたくなるではないか。
今度買ってこようかな…
「あ!痛った!痛いいたい!!ちょっと回復したい!」
「なにボケっとしてるの?今ボス戦なんだけど」
余計なことを考えていたせいでボスの攻撃を思い切りくらい、画面が赤く染まっている。
自動回復では追いつかない。
ハーブ先輩を組み合わせて回復を作る。こんなことなら余裕かましてないでちゃんと準備してきたら良かった。
マグナムに弾を装填し敵の弱点を狙う。
「さっきはよくもやってくれたな。お返しだぜねんねしな」
パァンと乾いた音を立てて発砲された私の弾はしっかりと敵の弱点に入り、敵の大きな体はぐらりと揺れて倒れた。
「さっすがココナちゃん!うまーい!」
「ココナいいところだけ持って行ったな」
本から顔をあげたクロロは私にそう毒づく。
こいつらは気分で味方につく相手をコロコロ変えるから本当にだるい。
「私だってダメージ入れてたからそんなことないでしょ」
クロロにデコピンを食らわせたところでピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
「あっ、ちょっと出てくる。待ってて」
コントローラーをソファーに置いて立ち上がった。