非日常のとビら

□25日目 人肌が恋しい夜
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深夜になるとなんだか寂しくなることがたまにある。
なんだか人肌が恋しくなってしまうのだ。

そういう時の私のはきっと決まってめんどくさい。
今の私はめちゃくちゃかまってちゃんだ。

時刻は深夜2時。クロロはまだ起きているだろうか。こんな深夜にあちらの世界に言ったことがないけれど、蜘蛛のホームがあるなら大丈夫だろうか。

今の私は外の世界に対する恐怖心よりも誰かにかまってほしい気持ちが大きかった。

私はパジャマのまま扉に手をかけると1歩を踏み出した。

周りに街灯などあるわけもないので星明かりが辺りを照らしている。
虫たちのおしゃべりが賑やかで部屋に虫が入らないようにめちゃくちゃ急いでドアを閉める。
これで見たこともないでかい虫とかが私の家に入っていたらあの家にいられなくなる。

そもそもこの世界の虫に私の世界の殺虫スプレーは有効なのだろうか。

そよそよと弱く吹く風を感じながらホームまでの道のりを歩くと、ぼんやりと明かりが灯っていることを確認する。

まだ誰か起きているようだ。
どうせ気配で私がいることはバレているとはわかっていながらもそっと中を覗き込むと、本から顔をあげたクロロと目が合った。


「どうした?夜這いか?」


そういたずらっぽく笑うクロロはなんだかすごく大人びて見える。
実際には大人なんだけど、いつもならもっといたずらっ子みたいな雰囲気を醸し出しているはずなのに。
これはかまってちゃんフィルターか?

こっそり覗き込むのはやめて、本を読んでいるクロロの前に行く。


「夜になってちょっと寂しかったからクロロにかまって貰いにきた」


普段なら絶対こんなこと絶対言ったりしないけど今の私は何となく寂しいのだ。かまってちゃんを舐めるなよ。


「お前ほんとにココナか?オレの知ってるココナはそんな可愛いことを言ったりしないんだが」

「うるさいなぁ。私はココナだよ。寂しいっていってんの!本読んでないで私にかまって。かまってくれないならほかの人にかまってもらう」


くるりと踵を返そうとすると、待て待てとクロロに止められる。


「折角のおまえを独り占めにできるチャンスをみすみす逃すわけないだろ?」

「わーい」


私が求めているのはどうってことないもの。私が眠くなるまでおしゃべりしてくれたらそれでいい。

私はやったことが無いけれど、きっと友達や彼氏とする寝落ち通話はそんな感じなのだろう。
安心できる相手にするものならば、きっと私はかなり心を許しているんだろうな。


「今日は誰も家に来なかったんだよ。おうちに帰ってきたらね、1人でできるカードゲームをやったんだ」

「お前また新しいゲームを買ったのか?今月もう5本買ってただろ」

「だってセールだったんだもん!やりたかったし買っちゃうじゃん〜」


PCでダウンロードして買うタイプのゲームはハードがあるタイプのゲームのソフトを買うより安く手に入れられる。
例えばお店でソフトを買えば6000円かかるものが、PCのダウンロード版で買うとそもそもの値段が安かったり、セールですごい時は90%OFFになったりする。
そんなもの買ってしまうに決まってる。
そして私は半額になるとすぐにポチってしまう傾向があるため自分でもどうにかしなければとは思っている。


「あ、あと今日ね、前に提出したレポートがかえってきたんだけど、25点満点中22点でA判定だったんだよ!」

「何についてのレポートだったんだ?」

「えっと、実験レポート?みたいなやつ。計算とか自信なかったんだけど何とかなったんだ!褒めて!」


私の話に興味なさげだが、受け流しながらも聞いてはくれている。
あくまで私の自論だけど、女の子の愚痴や世間話なんてただ自分が話したいだけだから、ただ聞いてくれてるだけでいい。
愚痴に対して解決策を求めているわけでも、真剣に聞いてほしい訳でもない。
主要な部分を聞いてくれれば話したこっちがすっきりするから、話し終えた後はきれいさっぱり忘れてくれてかまわない。
私が話したいだけだから聞いてる風にしてくれたらそれで満足だ。

クロロのはいつも小さなことで争ってばかりいるけど、女の子の扱いはやっぱり慣れているようで、受け流して聞いてくれるのはなかなか楽だった。

そして私の撫でろという注文に対しても、いつもなら髪をぐしゃぐしゃにするくせに今日はなんだか優しい。
きっと私を寝かせようとしているのだろう。

しかし残念ながら私はめちゃくちゃおめめぱっちりだ。

そして私はあることを思い出した。


「そういえば私新しく服を買ったんだよね。クラシックロリータと中華風ゴスロリ、あとレースタイプのワンピースなんだけど、見せる人いないからちょっと見てよ」

「お前それ着たらテンション上がってもっと寝なくなるだろ。見たくないわけじゃないが今度見せてくれ」


テンションが上がるのは間違いない。
それにきっとクロロは皮肉をいいながらもちゃんと褒めてくれる。
…確かにもっと寝なくなる気がした。
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