非日常のとビら
□24日目 ウィンドウショッピング
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エアコンは世の中で10番目くらいに偉大な発明品だと思う。
これがなければ私は夏を乗り切ることができないだろう。
断言できる。
エアコンがなければ私の大事なPCが機械熱でやられる上に、そもそもの気温プラス機械熱でストーブ状態になって私は死んでしまうだろう。エアコン大事。
余談だが私が思う1番偉大な発明品は布団だ。
布団を考えた人はマジで神だと思う。
夏真っ盛りで外は馬鹿みたいに暑いのにエアコンがあるだけでめちゃくちゃ快適に過ごすことができるのだ。
外ではミーンミンミンミンと蝉が喧しく騒ぎ立てているし、暑くて熱中症で倒れる人がたくさんいる中、私は外に出るわけもなくリビングで悠々とそうめんを啜っていた。
「ねぇココナ。オレは全く気にしないんだけどさ」
私の隣で大人しくしていたイルミが口を開いた。
視線で返事をすると、彼はテレビに映っている映像の方に目をやる。
それに習って私のもテレビの方に視線をやった。
画面の中では椅子に括られた男の人が頭をドリルで抉られて絶叫している。
ちゅるるっ、とそうめんを啜ってからまたイルミに視線を戻した。
「こっちの世界ってめちゃくちゃ平和だから血とか見ることないじゃん」
「うん」と相槌をうち、続きの言葉を催促する。
「普通の人はスプラッター映画を見ながらご飯食べるってことしないと思うんだけど」
「ひとつのことだけしかしないって時間勿体なくない?私やりたいことたくさんあるから同時に進められることは同時進行していきたいし…」
「ココナがそういう考え方をするのはよくわかってる。でもオレが言いたいことはそうじゃないんだよね」
キュイイインとドリルが鋭い音を立てながらめりめりと頭にくい込んでいく。液体の混ざったごりごりという鈍い音とともに男の絶叫が部屋に響き渡る。
パキッと氷が溶けて音を立てたので視線をしたに落とすとくるくると箸で混ぜてみた。
「私本物とかはさすがに生々しいから無理だと思うけど、モニターを通してみるなら問題ないみたいだよ」
私はイキリオタクという訳ではないからグロ画像を見ることができる私すごいなんて思ったことはミリもない。
むしろそれを自慢げに思ってる奴にグロ耐性があるからなんだと聞いてやりたい。
私は自覚のある中二病だから人様に迷惑をかけることはしない。
自覚のないものほど危ないなんてことはよくあることだ。
モニターを通してみると平気なのはどこか現実じゃないと感じるからだろうか。
画面の向こうのことが直接的にこちら側に干渉してくることはない。
その逆もまた然りだ。
しかし本物の場合その場に居合わせているため干渉することができてしまう。だからこそ恐怖を感じるのだと思う。
目の前で人が殺される時、自分が何とかすれば目の前の人が助かるかもしれない。
ぐちゃぐちゃに切り裂かれていても自分がなにか手を施せばまだ間に合うかもしれない。そんな他人の運命をあやつるような大きな責任感を伴ってしまうかもしれないから恐怖を感じるというのも無きにしも非ずだろう。
私はその場に居合わせたことはないけれど。
…本当になかっただろうか。
なんだかあるような気もするけどもやがかかったように思い出せないからノーカンだ。ノーカン。気にしたら負け。
しかしせっかくの夏なのにいつものように映画見てゲームしてゴロゴロしながらスマホいじって過ごすなんてなんだかもったいないような気もする。
しかし暑い外へ自ら行くのも気が引けた。
「ねー、たまにはオレの方に遊びに行かない?ココナ蜘蛛のホームくらいしか行ったことないじゃん」
「確かにそうだね。イルミがいれば安心感半端ないし今日はそっちに行ってみようかな」
最後の一口を食べ終えると食器を台所に運んでシンクの中に入れてすぐに洗う。
台所の中に食器が溜まっていくだけで人間はやる気を無くすものだ。
そうなる前にしまうのが吉。
ルームウェアからお出かけ着に着替え、 てイルミに準備ができたと伝える。
「ところでどこに行く気なの?私そっちの世界のこと全然知らないけど」
「え?どこって適当なところだよ」
「まぁそんなもんだよね〜」
イルミの実家じゃなければなんでもいい。
知らないところの観光はどこだって楽しいものだ。
私の世界と違ってこっちは湿気が少ないくて過ごしやすい。
何かあったらこっちにくるのもいいかも。なんて思いながらイルミの後ろをついていった。