非日常のとビら
□27日目 ニュースポーツ
1ページ/3ページ
うへぇ、と思わず声が出た。
…確かに、ここ最近は何も気にせずに過ごしていたのだから当然と言えば当然の結果だ。
むに、とお腹の肉を指で摘むと大きなため息をつく。
なんと前回体重を測ったときから3kgも体重が増えていた。
決めた。今日からダイエットをしよう。
毎日食べていたアイスは封印し、大好きなジュースも冷蔵庫から全て取り出し、その代わりに炭酸水を入れた。
少しストレッチをしてこの贅肉どもとさよならしなければ。
ヨガマットを敷いてそこに腰を下ろした。
突然身体を動かしてどこかを痛めたらダイエット所ではなくなってしまうため、よくストレッチを行おうと身体をぐいっとひねる。
ゴリゴリっと関節が音を立てるため、運動不足だなぁなんて思う。
体が硬すぎてストレッチに全然なってないような気がしてきた時、ちょうどよくイルミが訪ねてきた。
「あ!イルミちょうど良い時に来てくれたね!ちょっとお願いあるんだけど背中軽く押してくれない?」
私が今行っていたのは長座体前屈。
めちゃくちゃ太ももの裏が痛すぎて全く前に行ってくれないため少し人の力を借りたかった。
「なんで突然こんなこと始めたの?ココナが動くなんて珍しいじゃん」
イルミの言うことは正しい。確かに私は動かない。
「いつも動かないから私太ったんだよ…落ち込むから言わせないで…あっ、あとしばらく私に餌付けしないでね」
みんなは頻繁に私に食べ物を持ってきてくれる。
それを何気なくつまみ続けて、運動もせずにいたらもにょもにょにもなるだろう。
「そんなに太ったようには見えないよ?むしろたくさん太って誰も見向きもしないようになってくれたらオレ的には嬉しいんだけど」
「うわ、そっちのパターンかタチ悪いな」
確かにイルミが1gも私という存在が減って欲しくないと言うようには見えないけれど、もっと太れタイプは私にも良くない。
なんとか話を変えよう。
「私はさすがにやばい重さの門を開けて家の敷地に入ったりはできないから、それに比べたらなんか手軽にできるダイエットないかな」
私の後ろにまわってきたイルミの腹筋をぺたぺた触りながら聞いてみる。
「日常生活で必ず使うものを重くしちゃうのが1番手軽じゃん」
「聞く人間違えたわ。なんでもない」
背中お願い。と頼んでから前に倒れ込むために少し力を入れる。
「ねぇココナ。それちゃんと力いれてる?数センチしか変わってないよ?」
「これが本気で全力なの!優しくね!優しくいでででで!」
痛くてちょっと涙出た。ストレッチだけでこんなことになるなら続けられる気がしない。
「ねぇイルミ。私続けられる気がしないからさ、1つ思いついたんだけど遊びながらなら痩せられる気がする」
「もう弱音吐いてるの?はやいな。で、遊びながらって?」
鬼ごっことか缶けりとか言いたいところだけどハンター試験で馬鹿みたいな速さで馬鹿みたいな時間走っていたやつに持ちかけるものじゃない。
そこで私はまたひらめいた。
「今日そっちの世界風強かったり雨降ってたりする?」
「曇ってはいたけど風は吹いてなかったよ」
私が何を始めようとしているのかわかっていないイルミは首を傾げている。
「ちょっと人数的には寂しいんだけどドッチビーしようよ。柔らかいフリスビーなら持ってるし」
ニュースポーツならきっとそこそこ対等にスポーツができるだろう。
そうと決まれば旅団のホームで乗ってくれそうな人を探しに行こう。
柔らかいフリスビーを2つ持ち、スマホをポケットに入れると玄関からスニーカーを選んで私の部屋のあの扉へと向かった。